第48話

翌朝の起床は少し遅かったが、何事も無く出発。

一路、ルーニアの街を目指す。


予定通り村が完全に見えなくなるまで森を進み、そこから街道に出る。

あとは只管ひたすら進むだけだ。


昨日までと打って変わって、一切魔物に遭遇する事無く進んだかいもあり、陽が傾き始めた頃にはルーニアの街の外壁が見えてきた。


街を回りこんで反対側から入りたいのだが、思った以上に大きな街だった事で、そこからは時間との勝負になってしまった。

とても普通に歩いていたのでは間に合わないと考え、メルフィーを助けた時と同じスキルを多用したゴリ押しで、木々の間を立体機動全開で驀進!


何とか閉門ギリギリに街に入る事ができた。


「おう、ギリギリだな。身分証はあるか?」

門衛に冒険者証を見せる。


「おいおい、星無しじゃないか。もっと早く来れなかったのか?危ねぇだろ」

心配してくれた事に礼を言い、初めて来たので時間的な配分が良くなかったと言っておく。


「命が掛かってんだ、注意しろよ」と返してくれた冒険者証を受け取り街に入る。

さて、門の近くには宿やがあるはず。

何軒か回って空室を発見できた。

これで今日の宿泊場所を確保できたなと安心した。


それにしても、俺に対する手配はやっぱり隣の領まで及んでないのか?

それとも用心して街の反対側から入ったのが良かったのか?

微妙に判断ができなかった。

まあ、何も起こらなかったのが一番なんだけど。


さて、乾燥してない夕食を食べてから寝るかな。




やっぱり疲れてたんだろうなぁ、俺。

ゆっくり熟睡できた。

今は、ギルドに向かってる。


今朝起きてから荷物の整理をしてたら、荷背負いの中からリザベスさんの手紙が出てきたのだ。

別れ際には何も言ってなかったから吃驚!

内容はとても簡潔、ギルドで守れなくてゴメンて事とルーニアのギルドへの紹介状。

不思議なのは、リザベスさんが行き先を知った方法!

だって、俺が行き先決めたのって街を出てからだから、リザベスさんが手紙を書く時点だと、俺自身が行き先を知らなかったんだよ。

ここで考えても答えは出そうにないし、早々に棚上げするけど。


そんな経緯でギルドに向かってる訳。

宛名はサレスティアさん。

字面から言って女性だろうな。

リザベスさんが変な人を紹介はしないだろうから、良い人なんだろうけど、大丈夫かな?


何人かに場所を聞いて到着しました、ルーニアの冒険者ギルド!

早速中へ!

中の感じはトリニードとほぼ一緒。

受付に向かって、職員の綺麗な女性に声を掛ける。

「すいません。サレスティアさんっていらっしゃいますか?」


正面の女性はジッと俺を見てから「私がサレスティアです」って。


えっ!リザベスさんと歳の差があり過ぎじゃないか?

「あの、これを預かってまして・・・」とリザベスさんの紹介状を差し出した。


宛名と裏書を見て「リザベスからって、珍しいこと」と呟いて中身を確認中。

途中、また俺をチラッと見てから手紙に視線を戻した。

手紙をしまい「少し内容を確認したいので、こちらに来ていただけますか?」に個室を案内される。

断る理由も無くて付いて行くんだけど、何故か背中に視線が刺さる気がする。

それもただの視線じゃなくて、何か黒い感じ。

視線は気になったけど、サレスティアさんを無視もできなくて付いてくしかなかった。


「ごめんなさい。変な視線を感じたんでしょ?」

あっ!心当たりがあるんですか?そうですか・・・


「私ハーフエルフだから実年齢より見た目が若いのよ。リザベスとはギルドの研修の同期なのよ。それで今でも、たまに連絡を取り合うの。それにしても驚いたわ。あのリザベスが私に手助けを頼むなんて、本当にビックリよ」

ほぇ~、初めて会いました。

ハーフとはいえ、エルフ種の方。

本当に年齢不詳で綺麗なんだなって感心するばかり。


「エドガー君って、リザベスが手紙に書いてた通り、私を変な目で見たりしないのね」

変な目って、どんな目ですか?

「俺、おばちゃん達に全ての女性にすべからく優しくするように教育受けてるんで、変な事はしませんよ」

おばちゃん、怖いから・・・


「あらっ!良い人達に、良い指導を受けてるのね」

えっ!良い人ではあるけど、良い指導だったか?は疑問が・・・


「まあ、その話はいいわ。手紙の内容は知らないのよね?」

「ええまあ・・・」

今朝初めて手紙の存在に気付いたので。

俺のミスですけど・・・


「そう、なら結果から話しましょうか。まず、エドガーと言う冒険者について、このギルドにも辺境伯から連絡があったわ。内容は、辺境伯は関与しないって」

どういうこと?


詳しく聞くとこうだった。


トリニードの領主から「犯罪者が逃亡したので捕縛に協力して欲しい」と要請があったそうだ。

で、ルーニアがあるスラージャル領の領主が「どんな犯罪を犯したのだ?」と問い質したそう。

要請の書状を持って来た使いの者は「犯罪の詳細は分かりません」と答えたとか。

それに対して「そんな曖昧な内容で、私に協力をするとは、身の程知らずめ!」と怒り、それを拒否したらしい。

その後、その使いを追い出して冒険者ギルドに書状を送ってきたのだと言う。


書状の内容が「エドガーと言う冒険者がトリニードの領主に追われているようだが、私は領主として理由が定かで無い者の捕縛の協力要請を蹴った。ギルドに同様の要請があったとしても協力する必要無し」と言う事だったらしい。

それだけでは内容の理解が苦しかったので、直接話を確認してきたのが前述の部分だった。


「でも、リザベスの手紙で理解できたわ。あなたも大変ね」

サレスティアさんから同情を得られたが、こう、何と言うか、美人な方からの同情ってのは色々とクルものがある。

少々顔の温度が上がっていると、クスクスと笑われてしまった。


「不躾な視線は嫌だけど、全く反応されないのもチョットね。そう言う顔もするのね、歳相応の態度で安心したわ」だって。



参ったな・・・ホント。

俺はただ、おばちゃん達の怖い顔が浮かぶだけなんだけど・・・

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