第12話

諦めの境地で本の続きを読み進めたのだが、言語学者ってスキルは便利だったが問題もあった。


便利なんだろ?って思うだろうが、確かに便利なんだ。

綴り間違いや言い回しの間違い、言葉の選択ミスなんかも簡単に理解できるんだから。

ただそれが分かる分、間違いやミスが気になってしまって集中できないって事が問題なんだ。

もう、何て言うか、文字が崩れていたり、読み辛かったりするだけでも気になるって感じで少し面倒に感じた。

前にデズットが、スキルは使って慣れないとダメだ!なんて言ってたけど、コレに慣れるんだろうか?心配になるレベル。


それでも、読めなかったり意味が分からなかったりって事が無いのは助かった。

辞書って大抵が難しい言い回しや専門の単語を使ってたりするけど、サクサク読めた。


読んでて気付いた事がもう一つ、たぶん記憶力が上がってる。

辞書に良くある"○○参照"ってやつ、一度見たら次は見る必要が無かった。

俺自身分かって無いけど、何でか憶えてるんだ。

スキルの影響なのか?

まあ、必要そうな部分はメモも取ってるし問題無いだろう。


読むスピードは、そんなに速くないけど止まる事が無いので結構進んだ。

定時になるまでの数時間で、薬草辞典をほぼ読み終わる感じだった。

薬草辞典って、片手じゃ持てない位分厚くて、チラッと見た頁数は千を越えてた。

一番記述が多い薬草は、一種類で十頁ぐらいあった。

凄い詳しくて、生息地、見た目、採取の方法、その他注意点、効能、調薬の方法など、あらゆる事が書かれていた。

マジで、ためにはなった・・・詳し過ぎて読むのも大変だったけど。


まあ、これからも空き時間にできる事ができたのが一番の収穫かもな。



翌日は、前日の失敗を踏まえて必要な物を揃えた状態での効率化の検証をした。

通常通りに道具はそのままでスキルを使った場合と、新しい道具でスキルを使わずにやった場合の二回分を試した。

結果としてスキルを使った場合、約五割増しで回復薬が作れた。

単純に効率が上がっていることが証明された。


次に新しい道具を使って確認をする。

スキル無しの場合は更に効率的で、色の変化さえ確実に判断できるなら、約三倍の効率になった。

新しい道具の効果が段違いだということだな。

勿論、事前準備は必要だし、作業が完璧に頭に入っている必要はあるけど。


リザベスさんに報告するために、集まった検証結果を書き出してまとめる。

スキル有りの結果は当然錬金術師では無く調薬の方で計算した物だ。

書き上がった紙を持って部屋を出た。


「リザベスさん、少し話があるんだけど?」

「何かしら?」

「俺の仕事の事」と内容をボカす。

リザベスさんは、それで理解したのだろう、別の場所に案内された。


「それで何かしら?」

揃えた道具で効率を上げる検証をやったその結果を差し出した。


紙を見て一瞬目を大きく見開いた彼女は「これって・・・本当に、こんなに効率が上がるの?」と聞いてきた。

それなりに経験と実力はいるけど、慣れれば可能だと思う。

但し書きしているが、色の変化を見極めるのが難しい。


「それは仕方無いわ。本来はスキルで判断する物だもの。それで、何人いたら同じくらいの数ができるのかしら?」

そこは判断できない。

その人の得手不得手があるし、場合によっては作業を分けた方が良いかも?


「分ける?」

一人一人が全部の作業をすると、得手不得手で出来上がりに差が出る。

だから、選別、洗浄、擂り潰し、抽出、瓶詰めみたいに分けて作業をすれば差が出ないんじゃないかな?


「・・・重要なところは一番上手くできる人にさせて、それ以外を他の人が作業を分担するって事?」

そう!それ!

それが言いたかったんだ。


「なるほどね。この紙は貰っても良いのかしら?」

良いけど、関係者以外には見られたくないな。


「そうね、これって調薬スキルを持ってる人には凄い情報だものね。分かったわ、私が責任を持って管理するわ。まあ、見せるって言っても四・五人だけだしね」

管理するのがリザベスさんならって事で了承した。

ギルド長達三人じゃあチョット信用に欠けるし。

まあゼルシア様も信用できるから大丈夫かな。


最後に、明日から倍の六十個に納品を増やしたいけど、材料が足りるんだろうか?

確認しとかないと!


・・・やっぱり、流石に明日からは無理って言われた。

二日待ってくれたら、準備できるって。


「じゃあ、二日後から」って事で話はお仕舞い。

さあ!宿に帰って夕食を食べよう!

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