第11話
翌日は、朝から仕事には掛かれなかった。
まあ当然だろうとは思うが、三人組の事が問題になってた。
昨夜リザベスさんは帰宅準備を終えて帰る寸前に三人組の問題が発生したんだって。
駆け込んできた冒険者の話では内容も理解できない状況だったが、俺が相手だと聞いて直ぐに職員を派遣したらしい。
戻って来た職員と連行された三人を見て『えっ!何処からか情報が漏れたの?』と本気で心配したみたい。
少し話を聞けば、単なる思い込みで突っ込んだ馬鹿だと分かったらしい。
リザベスさんは、そんな彼等に「彼はギルドの仮見習いよ。そんな年末に成人したばかりの人が、あなた達よりも調薬スキルが高いと思うの?」と聞いてみたらしい。
仮って何だ?とも思ったけど、何年も勤める予定が無いし、確かに仮かも?と考え直した。
調薬スキルの事は聞いただけだし、リザベスさんは事実を知ってるから、相手の思考を誘導したんだろう。
彼等の答えは「成人したばかりの見習いだって!そんなやつの調薬スキルが俺らより高いなんてありえない!」って叫んだって。
俺的には、その自信過剰な考えは腕を磨く事の妨げにしかならないと思ってるけど。
そんな馬鹿らしいやり取りで聞き取りは終了。
そこから数時間に及ぶ長い説教に突入したんだって。
終わったのは、真夜中だった、らしい・・・
最終的にペナルティーとして一年の猶予期間を設けて、回復薬の増産か、回復薬の品質向上、どちらかが達成できなかったらギルドの取り引きを中止するって。
勿論、それまではギルドとの取り引きは継続。
彼等三人が勝手に取り引きを止める事はできない契約書に署名させたって。
・・・何気にリザベスさんが、腹黒い?気がした。
まあ結局は勘違いでは無く大当たりなんだけど、関係者一同誰も認めないんで、強引に"間違い"だと言い切った訳だ。
リザベスさん的には、勝手に契約を破棄されたりしなくなった事で猶予ができて嬉しいだろう。
俺としても、結構派手に否定した事で回復薬を作ってるって事実から目を逸らせたので結果的に良かった。
まあ、そんな感じの話を聞き終わってから部屋に向かう。
今日は、昨日購入した道具を使って効率化の検証だ。
工程的には問題無いけど、道具自体を使ってないので使い勝手が分かって無いところが唯一の問題だ。
まずは一度使って見るところから始めるしかない。
道具や素材の準備をして作業に取り掛かる。
それなりに大きな物を購入してきたので、一度に使う量も多い。
あれこれ検証しながら作業を進め、さて湯煎しようかと思ったところで失敗に気付いた。
湯煎用の器や鍋が無い。
いや言い方が悪かった、大きさの合う器と鍋が無い。
一度に作業できる量を増やしたのに、他の道具の事を忘れてた。
後で調達する事を心に決め、小分けにして作業を進めたのだった。
完成した回復薬を箱に入れながら工程と効率の事を考える。
ザルを使って洗う事で、洗った後の水切りが格段に楽になった。
たぶん時間的にも短縮できてる。
かなり効率が上がったのは擂り潰しの工程だろう。
乳鉢の改良版(擂鉢って言いたい)の作業性がとにかく良かった。
流石は注文主の爺さん、調薬スキルを持ってただけはある。
もう感謝するしかない。
薬研でチマチマ小分けに擂り潰しをしてた時と比べれば、確実に半分以下の時間に短縮できていた。
正確なところは明日器や鍋を調達してから時間を測った方が良いだろう。
思ったよりも良い成果が出たと納得したところで、本日納品予定分の回復薬を箱に入れてしまった。
ギルドの書庫から借りた本を手に取って、今から余った時間は読書に使う。
前々から余り時間の使い方を考えていたが、自分の知識不足を補うために使う事にした。
ギルドの関係者なら、建物から持ち出さない限り本を借りられると聞いて何冊か借りてきたのだ。
調薬スキルに役立つのは薬草関係の植物辞典なんだけど、最終的に錬金術師としての素材知識が必要だろうと魔物辞典や鉱物辞典なども借りてきた。
「さてっ!」と気合を入れて本を読み始めたのだが・・・何かがオカシかった。
孤児だった事もあり、今まで本などマトモに読んだ事など無いんだが、何の苦も無く読めてしまう。
聞いた事も使った事も無い言葉や単語もスルスルと理解できる。
理解不能な状況に?????疑問符ばかりが増えて、読書どころでは無くなった。
どういうことだ?
何で知らないはずの言葉まで理解できるんだ?
・・・っ!!!そこである事に気付いた、スキルっ!
言語って中級スキルがあったはず!
急ぎ【ストッカー】を確認して、言語は言語学を過ぎ言語学者っていう一番上まで成長していた事を思い出した。
絶対コレが原因だ!と何故か確信を持って言い切れた。
「文字や言葉を理解できるって便利って言えば便利だけど・・・諦めるか、勉強時間が減ったと思おう」
諦めの境地で呟いた。
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