冬
ちひろの誕生日は大晦日で、
俺は恋人らしく、お揃いの指環を買う計画をしていた。
安い、中学生でも買える、おもちゃみたいなやつだけど。でも。
ちひろは要らないと言った。どうせ付けられないんだからと。
年が明け、初詣に行き、ふたりで合格祈願の御守りを買った。
ちひろはこれでいいと言う。
お揃いだし、これなら鞄につけていても変じゃないからと。
おみくじは引かなかった。
人混みに紛れ、少しだけ指先を絡めた。恋人みたいに。
どこからか、俺を呼ぶ声が聞こえ、ぱっと身体を離す。
「ふたりで初詣? 相変わらず仲良いな、お前ら」
同じクラスの奴だった。
たぶん、その言葉に裏はない。それなのに背筋に嫌な汗が流れた。
これからクラスの奴らと河川敷で初野球をするという。
一緒に行こうと誘われて、ちひろも来るかと尋ねると、
笑顔を浮かべて首を振る。
こんなときちひろはいつも、必要以上に距離を置き、
ひどく遠くから俺を見送る。
白い手のひらがひらひらと、寂しげに視界に揺れる。
「いってらっしゃい――お義兄ちゃん」
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