第7話

 1日かけた実力テストが終わり、最後の1時間は体育館にて部活動紹介で終わった。

 部活なぁ。特にしっくり来るものは無かったが、何らかの部活動をするつもりではある。バイトをする事もありだと思うが、何かお金を貯めて買いたいものがあるわけでも無い。

 となると、判断基準が一つ頭角を表してくる。

 教室に戻る最中に背中に不意に衝撃。肩でわざとぶつかってきた、ニヤニヤしながらしてる女子。


和也かずやくん」

「よ、帆奈美ほなみ


 隠れる気もなく頭角自ら晒しに来た。入りたい部活が特に無くて、同じクラスでも無いのなら、部活で共通の話題を作るしかあるめぇ。


「部活何やるか決めたー?」

「うーん、迷ってるけど、そっちは?」


 一応聞いてるていを取っているが、バスケが固いだろうな。帆奈美は小・中とバスケ漬けだったし。


「私はねー。テニス部かな」


 めちゃくちゃテンポ良く、さらっと言ってのけたので、リアルにずっこけそうになった。


「はぁ!? バスケじゃねーの?」

「なんかね、今のうちにテニスできた方がいいらしい。大学楽しむために」

「えぇ……テニサーに入る前提の人生計画。そんなん憧れてんの帆奈美って」

「彼氏彼女が出来易いサークル1位なんだって」

「股の緩い女と下半身で物考える男が多いサークル1位の間違いだろ」

「えぇ……テニサーへの偏見がすごい。何で得た知識さそれ」

「広辞苑」

「絶対嘘じゃん!」


 ケラケラ笑い出す帆奈美、男なのにガルちゃん見てたりする知識をひけらかすと、ドン引きされそうなのでやめておこうと思う気持ちは正しい。いや、本当ネットの匿名性と女性の闇が浮き彫りになってるのいとおかし。って感じでめちゃくちゃ学べるから。共感は出来ないけど。

 テニサーへの熱い偏見を受けたせいか、帆奈美はうーんと言葉を探す。。


「後は天文部とか? 天文サークルとかもめっちゃカップル出来やすいんだって」

「何で? いんの者同士で惹かれ合うのか?」

「和也くんいつか冗談抜きで刺されるから気をつけな?」

「あ、マジ説教だなこれ。すみませんでした」


 帆奈美の目がどんどん曇っていくので、面白い事言ってるつもりで、他者を貶すのは良くない。他者を貶める笑いは、女子の反感を買い、すかさず校内での女子評価が下がる事すなわち、好きな女子から好意の対象から外れるというのは良くある事。捻くれてる事を認めてくれる優しさに甘えるのは自分の首を絞めてしまうのだ。因みにこの場合の最低の返答は「ネタで言っただけじゃん、マジになんなよ」である。これ本当言っちゃダメだぞ男子。女子以外にも秒で嫌われるぞ。


「因みに何でカップル出来やすいかって言うと、泊まりで観測スポット行ったり、夜に語らう雰囲気がそうさせるみたい」

「へぇー。そう聞くと確かにムードありそうだな」


 だがそう言った後、はてと気づく。さっきまでの、部活動紹介の面々のおぼろげな記憶を呼び起こしてみる。


「けどそもそもうち天文部無いんじゃないか?」

「それな」

「おい、何で候補にした」


 あざとく舌出してんじゃねぇよ。可愛いから許しちゃうだろうが。

 そんな俺の容認など知らずに、サムズアップする帆奈美。


「彼氏が出来易いサークル2位だったから」

「もの凄く大学で彼氏が欲しい事は分かった」

「いやー、流石に大学で彼氏の1人もいないのはまずいっしょ」

「別に何らかのコミュニティにいれば出来るだろ。帆奈美なら」

「おぉー、その心は?」


 興味津々で顔を近づけてくるので、心臓の鼓動が強くなっていく。


「……モテるんだから」

「へへん、あざーっす」


 笑顔でわざとらしく会釈して見せる帆奈美。

 こんな時意識してる相手に可愛いからとか綺麗だからなんて言える奴が羨ましいな素直に思う。

 ドキッとさせられるばかりで、俺から彼女の心を動かした事なんてあるのだろうか。目の前で彼氏を作りたいって言われるなんて、俺相手にはその気0って言われてるようなもんでは?

 同じコミュニティに属したところで、間近で仲良くなる帆奈美を見続ける事しか出来ないんじゃないか?


「俺……部活は適当に考えるわ。そいじゃ」

「え、和也くん」

大空かなた、部活どうすんの?」

「おぉ! かずやんが名前呼びになってる! 俺はハンドボール部やってみようかなって、先輩マネージャー可愛かったし、かずやんもどう? 体験入部だけでも」

「確かに可愛かったな」

「話し分かるぅー!」


 近くにいた大空かなたに話しかけて、無理やり帆奈美との会話を切った。

 これ以上喋ると絶対帆奈美に不快な思いをさせると思った。

 信頼されてるのに好かれていない事実と日々戦い。こちらだけ勝手に疲弊して、相手の気持ちに寄り添えない。好きだから、寄り添うより、寄り添って欲しくなる。そんな自分勝手な考えは間違ってると分かってるのに、抗えない。

 いっそのこと、話してる時だけ無くなってしまえば良いのに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る