2023-3-29
隣の家が解体されてベランダの秘密基地感が損なわれた。三月で二日しかないバイトも遊ぶ予定もない全休を映画二本と文庫本を読んでダラダラと潰した。そんな過ごし方をしている内に隣の家が完全に潰れていた。家に篭っていた私は夜、ただの基地となったベランダで珈琲を片手にその事実に気づいた。壁がなくなり、少しばかり見通しの良くなった基地で前までの独占的な秘密基地も悪くなかったが、星空だけでなく、車も見える。そんな基地も悪くないなあ、と思った。車を見ると仕事帰りだとか夜勤への出勤だとか、人が運転しているという事実から、想像できる物語を楽しむことが出来る。いつもより右手が口に缶を運ぶペースが早いことに気づいた。不在の物語を楽しんで、叙情的な気分になると情景の美も相まって珈琲が進むようだった。お酒を初めて飲んでから少し経ったが、私の右手は缶珈琲を握っている。その感覚が心地よくて、依存をしていない事実もまた私を安らげた。明日は大学の入学前案内でキャンパスに足を運ぶ。日記の嘘偽りない感覚を話せる友達が出来れば、それは望みすぎだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます