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5/2 17:15
市内中心部のビル街はGW中日だけあって人通りは少なく、道3本ほど挟んだ商業区の方にどんどんと吸い込まれていくのが見える。
人が少ないというのはつまり、尾行において人に紛れることが難しいということであり、原始的な手段での尾行は非現実的だということになる。その為、数日前から私は色々と可能性を探っていた。件のサプリでなければと考えたが、合致する条件がいくら何でも多すぎる。邦彦さんには悪いが、その線で調べさせてもらおうと思う。
ひと昔前だったら、人知れず荷物を受け取る手段など貸しロッカー経由で細かく連絡し合う必要があったはずだ。だが技術の発展とは目覚ましいもので、メールと番号一つ控えれば受け取りステーションを駆使して荷物を受け取れるのだ。悠さんから一般的な帰宅経路は確認が取れているので、その周囲で受け取りステーションを割り出し先回りすればいい。
「……って考えるのが素人考えなんだろうな」
流石にそれで済めば楽だし、仮にそれで空振りした時に『次』があるのかわからない。対策課で見たサプリもどきが一連の原因だとすると、近く邦彦さんは悪魔憑きでありながら症候群じみた症例と共に事件を起こし、悠さんの人生に影を落としかねない。泥臭い話になるが、距離をおいて尾行するしかない。出来るだけステーションに立ち寄るかを確認し、問題のサプリがあれば飲用を止め、手続きを通してサプリから取り込んだ悪魔を祓う。これが強制的に祓いでもしたら『それだけの理由』が発生してしまう為、邦彦さんに累が及ぶ。
前回――ホットエピックの執行社員達は、もともとが卜部に憑いた多数のルサールカを使った『単一の悪魔』だ。今回のケースはごく小さい悪魔の――断片に思えた。総量不明なほどの数を撒き散らしながら
本音を言えば、邦彦さんに何もなければ『たまたま』で済ませたかった。
『相棒、言いにくいんだけど……割とマジでヤバくない? あの人』
『情報が揃いすぎてたんだけど外れて欲しかったなあ』
一の探知力を頼りに邦彦さんを確認した時、そのおどろおどろしさに思わず胃液がせり上がる思いがした。
彼の中には悪魔がいる。それはわかる。
そして、その悪魔の全身に吸い付くように別のなにかがいた。見た目と、数と。さながらダニのようだ。悪魔憑きですら意識を刈り取られ、主導権を奪われる可能性、憑魔症候群のカラクリ。さながら疫病のように広がる――あれ?
『一、邦彦さんが荷物を手にしたら全力で奪うぞ。その上で小型のヤツだけ祓う』
『一応聞いておくが、強制したときはあの御仁が聴取対象になるが?』
『邦彦さんが年単位で塀の向こう、
『落ち着け、真琴! 今お前が大きく動いたら対策課が割を食うんだぞ! 奴を逃さないように末端で情報を止めておくのも
思い出した。多数の推論は、数多の川が海に流れ込むように結論へと合流した。こんな事ができるやつを、私はひとつしか知らない。一が止めていなければ、多分邦彦さんすら危険な目に遭っていたかもしれない。
思い出せ、真琴。お前が救える範囲はお前が思っているよりずっと狭い。目の前の人だけに集中しろと、自戒した筈だろう。
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