エピローグ

『サンタさん、お願いです!ボクに、『お別れしても心の傷が早く癒えて、さよならしたご縁が素敵な思い出になる鉛の矢』をください!心が傷ついてしまった人間たちが、少しでも早く前を向いて歩き出せるように。さよならしたご縁も愛せるように。ボク、どんなご縁も幸せなご縁になって欲しいんです! ノア』


「ふふふっ・・・・」


 世界中の子どもたちから届く手紙に目を通していたサンタ・クロースの助手にして恋人、アリアは、その一通の手紙を手にして微笑んだ。


「どうしたのじゃ?」

「見て、これ」


 笑いながらアリアはその手紙を、サンタ・クロースへと手渡す。


「なるほどのぅ・・・・『もう少し欲張りになっても、良い』とは言ったが」

「ノアらしいわ」

「まったくじゃな」

「ねぇクリス、私といる時くらいは、いつもの姿になってくれても良くない?」

「アリア、わしはサンタ・クロースじゃよ?」

「クリスのケチッ!」


 ぷぅっと大きく頬を膨らませるアリアに、大きくため息をついたサンタ・クロースは、その姿を青年の姿へと変える。


「アリアって、そんなにワガママだったっけ?」

「だって・・・・ずっと、会いたいのを我慢していたんだもの」

「それは、僕も同じなんだけどな」


 苦笑を浮かべながら、クリスはだいぶ背が伸びて大きくなったアリアの肩を抱き寄せた。


「今年も、ノアの所に行かなくちゃいけないわね」

「そうだね。でもその前にまずは、ノアが望んでいる鉛の矢を作らないと」

「ノアも、随分と難しい宿題を出してくれたわねぇ」


 お互いに顔を見合わせ、肩を竦めて笑いあう。

 次のクリスマスまでの、キューピッド・ノアからの宿題。

 サンタ・クロースとその助手アリアは、幸せな難題に頭を悩ませるのだった。


【終】

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