第31話 みおちゃんのオムライス
十分後、
彼女は最高のメイドを見せてあげるよと言わんばかりに胸を張って、こう言った。
「では、ご注文はお決まりでしょうか?」
俺たちは同時に頷く。
この展開は、まるでまだ夢の中にいるようだった。
ーー俺は……
今更状況を飲み込んで、仕事の緊張が一気に消えた。アプリの紹介に集中したかったから、他の事はしばらく考えないようにしていた。だが、今はようやく羽を伸ばせる。
「
「はい!」
俺の質問に我に返ったのか、
「じゃあ、先にどうぞ」
「オムライスをください!」
ーーオムライス、か。俺も
「じゃ、俺もオムライスだ」
「では、少々お待ちください!」
♡ ♥ ♡ ♥ ♡
私が厨房に入ると、
「あら、またオムライスを作るの?」
「そうです!」
「楽しみだね。前回作ったオムライスも美味しそうだったし」
「
「いいえ、結構です。わたくし、仕事に戻りますから」
言って、
歩きながら、彼女は背筋を伸ばす。
ーーさて、料理を始めようか?
確かに料理の腕はまだまだなんだけど、今回は前回より美味しいオムライスを作るのを目指している。私のきちんと作ったオムライスを、
私なりのオムライスを口にしたら、一目惚れするはずだ。
私は髪をポニーテールにまとめて、気合を入れる。
カウンターの上に置かれた材料に目を通した。
記憶をたどって、私はオムライスの作り方を徐々に思い出す。あ、まずは卵を割り入れたっけ。卵液をフライパンに入れたっけ。
記憶が間違っていないことを願いながら、私はひたすらレシピ通りに作ろうとする。
そして、オムライスがやっとできた……。
そんな美味しそうなオムライスを見つめて、私は後悔してしまう。
ーー自分の分も作ればよかったのに、と。
とにかく、私は二つのオムライスを皿に載せてから食堂に運んでいく。
お客様が
ドアを手で開けるのは無理なので、背中で開けることしかできなかった。
私はドアに背中を預けて、強く押す。
最初は開かなかったけど、二、三回押してからドアがからりと開けた。
私はバランスを崩しそうになって、突然身を乗り出す。
幸いなことに、皿を落とさずにバランスを取り戻せた。
安堵の溜息を吐いてから、私は
「お待たせしました!」
言いながら、私は配膳した。
「美味しそうだな!」
「美味しそう〜!」
少なくとも、第一印象はよさそう。緊張しながら、私は彼らの感想を待っていた。
特に
「食べる前に、もしよろしければケチャップで何かを描くことができますので、描いてほしいことがあれば是非教えてください!」
「あの、私はいいんですけど」
同僚がそう言って、
「俺は描いてほしいことがあるよ」
「それは、なんでしょうか?」
「ハートをください」
ーーこうして告白になるのか!? でも可愛いし、本当にハートを描いてみたいなぁ。
ケチャップボトルを軽く絞って、私はハートの形をなぞる。
私が描いている間、皆が無言でオムライスに見入っていた。少しプレイヤーを感じて手が震えたけど、結局無事に描けた。
描き終えてから、私は仕上げたオムライスを
「では、冷めないうちに食べてください!」
その言葉に、私はテーブルから離れていく。
「美味い! みーー
その言葉に、私は頬を染めてしまう。
私はテーブルに振り向いて、彼らの食べている姿をこっそりと観察した。できるだけ感情を顔に出さないようにして、
「お、美味しい! やっぱりオムライスを頼んでよかったわ!」
ーーほう、同僚もいいセンスだぁ!!
♡ ♥ ♡ ♥ ♡
まだ会計を済まさなかったけど、私は本当に
ま、仕事はあるし、私より忙しいだろう。それでも、まだ別れを告げたくない。もう少しだけでもいいから……。
十年前の私が言えなかったことを今度こそちゃんと言いたい。今日は私が後悔を残さないで終わるように……。
そう思いながら、私は無意識に片付け続けた。気づいたら皿を全部洗って、材料を全部冷蔵庫に入れていた。
溜息を吐いて、髪を下ろした。長い間結んでいた髪がまだポニーテールの形を取っている。手で髪を直したあと、私は厨房を出た。
あの同僚はもう会社に戻ったのか? それとも帰路についた?
どちらにしろ、これは最高のチャンスだ。
私は
「
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