第30話 俺、君のそばに居たい
俺は夢を見てゆめゐ喫茶に来た。夢だけだとわかっているにもかかわらずここに来た。だが、彼女ーー
俺は言葉を失った。十年間も会っていない人と、出張でやっと会えた。本来ならば、俺は喜びに溢れているはずだった。なのに、仕事を優先しているのか、
しかし、彼女のことを考えると出張のことがどうでもよくなった。
「……
俺はいつも彼女のことをそう呼んでいたので、思わずそう口に出した。
今となっては、
俺は目的を果たして、願いがすでに叶った。だからこそ、何も言えずにいる。
人生がこんなに変わるのはあっという間だった。
それでも、何か言ったほうがいいだろう。十年ぶりに会えたけど、気持ちが冷めたわけではないし。
「あの、今は仕事中だから……。話は後回しにしてほしいけど」
彼女をがっかりさせないように言葉を選ぼうとしたけど、どうせ
そして、
「私事について話すどころじゃないよ」
「すみませんでした。今は紹介を続きます」
俺が次の機能を紹介しようとした矢先に、ゆめゐ喫茶店長と
「実は、わたくしはもう満足しています。上出来ですね。したがって、わたくしは今このアプリを購入いたします」
ーーもう購入決定なのか?
この仕事は拍子抜けするくらいほど簡単すぎた。だから、俺は引っかけはないかと悩み始めた。
少なくとも、
「ありがとうございました」
と、
そして、俺たちも礼を言う。
「では、せっかくなので、食べ物や飲み物を差し上げましょうか?」
そう訊いてくれたのはゆめゐ喫茶の店長。
「お願いします!」
言って、
俺は向こうの席に向かった。席に座ると、俺は
「それでは、用事があるので、私はここで」
ーー怖っ。
「お世話になりました」
「こちらこそですよ。このアプリはゆめゐ喫茶の成功にとって、かけがえのないものだと思います。大切にしますわ」
気のせいだったのか、
数秒後、
俺は
そして、ドアの閉める音が店内に響いた。
しばらくの間、店内は静まり返った。
「ではでは! ご主人様、お嬢様! ご注文お待ちしていま〜す。ゆっくりと新メニューをご覧くださいませ!」
ーー
俺たちはいいタイミングで来たようだ!
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