毎晩同じ食事の男

肉を休ませる

第1話 過去へ続く道


 その日も街には、ありふれた喧噪が陽の光とともにどこかへ過ぎ去ると、薄暗い景色を点々とする窓明かりと静寂が残されていた。


「さて、できたかな」


 とあるマンションで暮らす  てん しげ はいつものテーブルで、調理が完了し、溜め込んでいた湯気を解放させるカップ麺を今や食せんとしていた。

箸を持ち替えがてら、ふと繁樹はテーブル下に置かれている平たい段ボール箱にをやった。


 視線の先にある、「ビッグヌードル カレー味 20個入り」段ボールケースの、

開かれた口から確認できる個数は、いまや最後の1個となっていた。


「そろそろ、仕入れなきゃな」


と呟きつつも繁樹は、ふと昨晩の夕食を思い出していた。




 前日の夜、繁樹 は、出来立てのカップ麺「ビッグヌードル カレー味」の、湯気を冷まし、かき混ぜていた。箸を持ち替えがてら、ふと繁樹はテーブル下に置かれている平たい段ボール箱にをやる。


 視線の先にある、段ボールケースの開かれた口から確認できるカップ麺の個数は、残り2個であった。


「少なくなってきたな、20個もあったのに」


 いまや残りがたった2個で寂しくなった「ビッグヌードル カレー味 20個入り」段ボールケースの中身は、購入当初の、無数にあるとも錯覚できる贅沢感をすっかり欠いていた。




 18日前。

 繁樹は、「ビッグヌードル カレー味 20個入り」を買い、段ボールの封を開けていた。段ボールの中にはびっしりとカップ麺が詰められていた。

そうして、最初の1個目をとりだすと、調理に掛かった。


「そういや、昨日は焦ったな。最後の1個だったからな。予報だと今日は天気が悪くかったからな。」


 仕入れられなかったらどうしようかと思ったが、外出時間は天候に恵まれた。


「在庫は常に確認しなきゃな。お湯を入れて、さあ食べようと思ったとき、たまたま段ボールをみたら、0個だったからな。」


 などと考えているうちに、麺は出来上がった。



「焦りながらの食事なんて嫌だよね。とか思いながら、昨日は食べ始めたっけ。こうやって」


 18日前の繁樹が、残数0個となっていた19日前の繁樹の食事の開始を思い返す。そして、残数20個となり当分在庫の心配をしなくてよくなっていた、18日前の繁樹もまた、食事を始める。

 と同時に、在庫に余裕があった18日前を思い出す、残数2個の前日の繁樹が…、

そして、残数1個で明日にでも仕入れるかと考えている、現在の繁樹もが食事を始めた。もしかしたら未来の繁樹も、現在を思い出しながら、麺の在庫数を心配しつつ、一緒に食べ始めているのかもしれない。


 複数の時間の繁樹が一斉に麵をすすり、食べ終えた。

それぞれの時間帯から見えるいつものテーブルの景色に一言の感謝。


「「「「ごちそうさま」」」」






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