第6話初恋だったの
再会した僕たちは三十年の穴を埋めるかのように時間をみつけては二人ですごした。いい大人なのに朝までゲームをしたこともある。
友永有紀子はいわゆるシングルマザーであった。職業はタウン誌の編集をしていた。忙しい仕事の合間をぬって、なんと彼女は独学でゲームを作ったという。
「子供の時ゲームできなかったからね、その分今のめりこんでるのよ」
彼女の作ったゲームをテストプレイする僕に有紀子はそう言った。
僕たちが交際するのにそう長い時間は必要なかった。ありがたいことに有紀子の娘の有理子も僕のことを受け入れてくれた。
三人で一緒に桃太郎電鉄をして遊んだこともある。
「前のパパも和友さんみたいだったらよかったのに」
ボソリと有理子は言う。
そんな有理子にキングボンビーをなすりつけると本気で切れられた。
「今の撤回、和友さんやっぱりサイテー」
ぷんすかと有理子は怒る。
交際を初めて約六ヶ月後には僕は有紀子に結婚を申し込んだ。さすがにこれは緊張した。
「私、高校生の子供がいるおばさんだけど本当にいいの?」
有紀子は逆に僕にきいた。
「おばさんなんて自分のことをいうなよ。君のことが好きなんだ。これからもずっと一緒にいてほしい」
けっこう恥ずかしいセリフを僕は言った。
有紀子は僕のプロポーズをうけてくれた。
この話を岸野にするとさぶいぼでるわといわれてしまった。
数少ない友人の岸野は僕たちの結婚を心から祝ってくれた。結婚祝いに僕たちの似顔絵を彼は描いてくれた。
「あの時、どうして僕の家にファミコンをしにきたんだい?」
結婚式を明日に控えたその日の夜、なんとなくだけど気になっていたことをきいた。
「和友君が私の初恋だったからよ」
有紀子はそう言い、僕を抱きしめ、そっとキスをした。
ファミコンがやって来た日 白鷺雨月 @sirasagiugethu
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