第004話 天音

 ──店外、石畳舗装の歩道。


 強制退店させられた客の一人。

 パーカー姿の少女が微笑を浮かべる。


(やっぱり……ただのラーメン屋さんじゃなかったか)


 少女は吹き始めた夜風に長髪を委ね、パーカーのポケットに両手を入れ、少し離れたところから、上半身を軽くひねって店の外観を眺めている。


(どうやらメグちゃんさんに、ボクの妖力が呼応して、召喚系の術が発動したみたい。それにあの……眼鏡の娘。恐らくは、右衛門作さんと同じ妖術絵師……)


 少女・天音は店に背を向け、歓楽街とは逆方向の、細い路地へ向かう。


(お取り込みのようだから、の確認は、また後日……。あまり時間はないんだけれど)


 閉業店舗が連なる、月明かりだけが頼りの暗い路地。

 路上にせり出したスナックの看板は、いずれもネオンサインが消灯している。

 天音はその闇へと、溶け込むように消えた。


(物言う神と、拾体じったい下僕獣げぼくじゅう……。絶対に……顕現させない!)

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