第25話 キャラクター
こうして、水無瀬さんの専属コーチになってから二人での練習が始まった。
水無瀬さんは前回DO CUPを優勝している事もあり、ヘロフェスでは大会運営直々にキャラの制限を申告して来た。
制限の内容としてはヴォイド、ガードナー、エリストス、そしてユニバースの4種類のキャラの使用禁止だった。
ガードナー、エリストスは大会で最も使われるキャラであるから使用を制限、そしてヴォイドは水無瀬さんの持ちキャラなので必ず縛らなければならないのは分かる。
でもどうしてユニバースの制限理由は多分だが、初心者でも扱いやすく尚且つ現在の競技シーンで使用率が最も高いからだろう。
ユニバースというキャラはその名の通り宇宙をモチーフにしたキャラで、自分の研究で得た能力で重力を自在にコントールできるようになり、宙に浮いたり、逆に敵に重力をかけてスピードを遅くするなど自由性が高いキャラだ。
スキルはグラビティコントロールと言い、先ほど説明した通りだ。
そしてアビリティは自分で開発したブラックホールを投げる事が出き、近くに居るキャラクターやグレネードなど関係なく吸い込む。
ガードナーの爆撃などは吸えないが、グレネードなどの投擲物は吸い込み可能で敵を吸い寄せている間にグレネードを投げる事で大ダメージを与えることができる。
他にも重力を操作できるため、高い場所から降りたりする時の反動を打ち消せるなどHEROXの中でもトップクラスに自由性が高いため、競技シーン以外でも人気のあるキャラだ。
練習のしやすいキャラは他にも存在するが、水無瀬さんみたく前線を張るのに向いている人が扱えるキャラとなると限られてくる。
多分だが、水無瀬さんは本来は戦闘狂だ。
大会では自重していたのだろうが、二人でカジュアルを回した時に激戦区ばかり降りていたし、次々と敵を求めて移動していたのでそれだけでハッキリと分かった。
既に待機している水無瀬さんのサーバーに俺は入る。
「どもー、今日はお願いします」
「あ、Adaさん! 今日からまたお願いします!」
相変わらず元気な声だと思い、俺は鼻で笑う。
「なんで笑うんですか!」
「いや、元気だなって。それで、キャラ制限の件ですけど」
「それですか? 正直私は、今回は後衛とか中衛に回っても良いんですけど……」
「メンバーって決まってますか?」
「はい! 今画像とお名前を送ります」
水無瀬さんの強みを活かすならば出来るだけ前衛に配置したいが、メンバーの中に前衛一筋の人が居ればその人に譲ったほうが良いだろう。
キャラ制限が無く、勝ちに行くならば水無瀬さんを無理矢理にでも前衛に配置した方がいいが、今回はキャラ制限と言う縛りがある。
これを鑑みた上で、構成を考えなければ今回の大会では通用しないだろう。
水無瀬さんからメンバーリストが送られて来た。
水無瀬さん以外の他二人は『
というのも、前にKeith Heavenの公式ホームページで水無瀬さんの情報を見ようとした時に、水無瀬さんを探していたのだがどうも如月さんが気になってキャラクター情報が書かれているページに飛んだはずだ。
そこには【女の子を落とすのは容易だが、男性を相手にすると立場が逆転してしまう女垂らし】と書いてあって、立ち絵も遠目から見たら男性に見えるような恰好をしており、ホストが来ているような高級スーツに女性としては整い過ぎたボーイッシュな顔立ちに、髪型はショートボブ。
二次元関連の物が好きな女性ならば誰でも虜になってしまうような見た目をしていた事は覚えているが、逆に見たのはそれっきりで声とかその他の情報は一切しらない。
天羽さんは確かASMRを中心とする方で、一度カジュアル大会で一緒にチームを組んだことがある。
天羽さんは声が特徴的で、表現するならばアニメに出て来るメスガキキャラのような声をしているため、配信スタイルも主にMの人に向けられた物が基本だと言っていた。
今回も全員女性か。
メンバーリストを見たところ、未確定の部分も多数あったが決まっている枠の中に4KAGIの名前もあった。
リーダーを務めるようで4KAGI以外のメンバーはまだ未確定であったがこれは、強敵の出現だ。
俺と共に世界大会で猛健闘をした相手。
一筋縄ではいかないのは容易に想像が付く。
「なるほど、ありがとうございます」
「えっと、メンバーの方は分かりますか?」
「はい、如月さんはちょっとしか分からないですけど天羽さんは以前関わった事があるので大丈夫です。如月さんに関しても後日アーカイブなど見させてもらうか、カスタムでプレイを見極めようと思います」
天羽さんは俺と一緒に大会に出た時は最高ランクはゴールドだったはずだ。
そして使用キャラはエリストスがメインで他のキャラはあまり使えなかったはず。
となると、天羽さんはエリストスをピックするだろう。
問題は如月さんだが、水無瀬さんと同じ企業ならば聞けば分かる。
「えっと、如月さんって何使うんですか?」
「え、まひろくんかあ。確かドラグナーだったはずです」
ドラグナーと聞いて大体の人は竜騎士やドラゴンを想像する人が多数だと思うが、それは全くの別物でHEROXに出て来るドラグナーは薬の沼にハマった青年だ。
スキルは5秒に一回薬を注射することができて、スピードとアビリティの溜まる時間が速くなるというもの。
アビリティは薬が注入された専用のピストルを使う事が出き、その銃弾を喰らったキャラクターは睡眠状態になるというもの。
睡眠を一度喰らえばダメージを喰らうまで目覚める事は無く、主にアビリティを当てて3対2の状況を作り出し、眠っていない敵を倒して最後に寝ている敵をフォーカスして倒すというのがドラグナーの主な戦法だ。
決まれば強いキャラだが、アビリティを当てるのが難しく使われる事はヒールランナーよりかはあるが、主流のキャラではない。
しかし水無瀬さんと如月さんでは前線を張るという仕事が被ってしまっている。
別に前、中、後衛とこだわる必要は無いのだが、勝ちに行くためにバランスを整えるとなると相性の良いキャラは限られる。
まあ、水無瀬さん自身が決める事だから深く干渉するつもりは無いのだがな。
「なるほど、まあバランスを考えると建物中での戦闘の強いポイメル辺りを入れるのが無難ですけど、水無瀬さん自身が何を使いたいかなんで任せます。一応、4KAGIやG4Siinに比べたら教え方は下手かもしれないですけど、大体のキャラは教えれるので何でも申してください」
水無瀬さんは悩むような声を上げ、そして悩みに悩んだ末か答えを出した。
「えっと、じゃあアバターでお願いします」
「えっ、アバターですか……?」
アバターとは現環境最弱と言われているキャラで、その性能はスキルで分身一体を出し、アビリティでは円形になるように分身を合計10体出すという物。
説明は以上で、他のキャラと比べて説明することが本当に無い。
近接戦はアビリティを使えばトップクラスだが、戦闘をから引く性能は無いし、スキルやアビリティで味方の援護も出来ない。
相対的に見ても、明らかに性能が劣っている。
そんなキャラを水無瀬さんは極めようとしているのか。
「はい、ダメですか?」
「い、いや全然。アバターとか自ら使う人を久々に見たんでちょっと驚いただけです」
雑魚キャラを極めようとするその精神を批判したりはしないが、なんかちょっと変に思ってしまう。
まあだが、彼女の決めた事ならば全力でサポートしなければならない。
それがコーチと言うものだと思う。
「それじゃあ、カジュアルしますか」
「はい! 今日も今日とて頑張ります!」
俺は慣れた手つきで準備をして、配信を始めた。
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