第22話 二人でのコラボ

 DO CUPが終わり、一週間が経った。

 そして今日も俺は4KAGIとG4siinとランクマを回していた。


 DO CUPが終わり、俺のチームが優勝したあの日、俺は情けない事に桜華に慰めてもらいながら彼女たちのサーバーに入った。

 やはり優勝したという事は嬉しく、感極まりない事だったのに後のコラボがどうしても頭から離れずに複雑な心境になっていたからだ。

 それでも水無瀬さんもそうだし、他の二人に迷惑をかけるわけにはいかないと思い俺は平静を装って彼女たちを祝い、そして優勝後の二次会に参加した。

 

 そして現在、俺はとんでもないバズり方をしていた。

 視聴者数を表示してくれる場所には6000という数が表示されており、フォロワー数は9万人を優に超えていた。

 どうしてこんな数になったのか、それは今までの水無瀬さんとのやりとりが関係していると桜華は言っていた。


 水無瀬さんがSMコラボをしようと言ったあの日、俺は小さな火ではあったが燃えていた。

 それを機に俺に対してヘイトが向き、どんどんと人が集まって来たのだが、その人たちがどうやら俺をそういうキャラの人だと判断し、火種は徐々に小さくなっていったという。

 そして、水無瀬さんも元々Mよりのキャラだったためそういう事を言いだすのもおかしくは無いと判断し、今回大きな炎上にもならなかったという。

 

 そして、バズった要因は俺たちのやりとりで、まず初めに水無瀬さんの切り抜き師があげた100万再生を突破したあの動画。

 あれがバズりの第一波となり、Vtuberに興味のある人たちが水無瀬さんのチャンネルに大きく流れた。

 そして俺の方にも若干だが流れて来て、平均視聴者数が二倍になった。

 この時点で水無瀬さんは1万人ほどフォロワー数が増えていたという。


 そして、その後のSMコラボを期待している人や俺たち二人の絡みが評価されドンドンと広まった結果、俺たちは燃えずにそのままコラボを決行することが出来そうだという状況だ。


 正直、俺はこんな簡単に炎上を回避出来て今も不思議に思っている。

 それこそ、前にTwllterを眺めていたらVtuberが同企業なのかは分からなかったが異性とゲームでコラボをして炎上していたのを見た。

 それがあったからこそ、心配していたのもあるのだが俺が過度に心配し過ぎていたのだろうか。


 「リーダー、今日は水無瀬さんとコラボするんでしょ? この辺にしときます?」

 「そっすね、リーダーがまさか女の子とSM……まあそんなキャラだし、リーダーイケメンですからねぇ……」

 「ざけんな、俺はSMするって聞いた時嘘だと思ってたけど水無瀬さん本気だったんだぞ? そんなの炎上するってわかってたから毎日怯えてたんだぞ? それなのに、なんかバズるし、炎上はしないしで俺の心配と不安はどこに行ったんだか……」


 4KAGIとG4sinnが言うように、今日はDO CUP明け初めて水無瀬さんとコラボする。

 しかも二人で……

 昨日初めて告知がされて、SMコラボではないが実質SMみたいなものです!もう興奮が抑えられません……とかいう内容で水無瀬さんがTwllterを更新していた。

 俺はその内容に正直ゾッとしたが、まあここで一度コラボしておくことによってSMの時に良い働きをしてくれるかもしれないと思い俺はコラボを引き受けた。


 「はははっ、リーダー二次会の時凄い声で参加してましたしね」

 「ほんとですよ、リーダーあれって泣いた後だったんですか?」

 「当たり前だろ!? 何はともあれ、教え子が優勝したんだぞ!?」


 「はははっ、リーダーらしいですね」

 「ほんと、感情性豊かだよなあ、リーダーは」


 ランクマを進めながら俺たちイツメンは雑談をし、この試合もチャンピオンを取った。

 

 ~~~


 結局いつも通り6時まで配信をしてしまい、配信時間は10時間を越えようとしていた。

 水無瀬さんとのコラボは8時からであと2時間ほどある。

 4KAGI達にも疲れが見えていたので俺はコラボがあるからと言い配信を終わる流れを作った。

  

 「んじゃ、終わりますか」

 「ういっす、お疲れさまでした。リーダー、コラボ頑張ってくださいね、見てますから」

 「最後の一言くっそ余計なんだが? まあいいや、おつかれ」


 俺はDiscardのサーバーから抜け、視聴者にも「おつかれ、んじゃ見てくれる人はまた後で」といい配信を切った。

 今もまだ、炎上していないことに対して信じ切れていない俺が居る。

 絶対におかしい、どうして炎上せずにここまでこれたのか。

 炎上していないという今の現状が、俺の不安を煽りまた心配にさせる。

 でも、水無瀬さんも同じような気持ちになっているかもしれない。

 それなのに、俺だけ逃げて彼女だけを危険に晒すのは人としてどうなのかと思う。

 だから今日は、立ち向かわなければならない。


 俺は防音室から出て、脱衣所に向かった。

 一度シャワーを浴びて、気持ちを楽にさせようと思ったからだ。

 

 ~~~


 コラボの時間になった、Discardの通話機能を使い俺は彼女に通話をかける。

 心臓の音が大きく、着信メロディを貫通して俺の耳に聞こえてくる。

 逃げる事はまだ間に合う、でも逃げてしまっては彼女がという葛藤が頭の中で繰り広げられている。

 

 「あ、どうもAdaさん。お久しぶりです」

  

 5コール目ぐらいで通話に出た彼女の声は前の元気そうな声とは違く、少し暗い声だった。

 

 「どうも、お久しぶりです。コラボの件、大丈夫ですか?」

 「あっ、はい。すみません、ちょっと緊張してて……」

 

 「やっぱそうですよね、自分も炎上してないのが不思議で、なんか変な気分です」

 「そうですよね、私があの時変なこと言わなければ大丈夫だったんですけど、変に気持ちが高ぶっちゃてて本当にすみません……」

 

 「まあ、良いですよ。それよりも、もうそろそろ配信始めないと」

 「そうですね。まあ私、かなりの変態なんで思う存分虐めてください!」

 

 「アハハ……炎上しない程度に頑張ります」 

 「はい、私もです! それじゃあ配信しますね、Adaさんの方では配信しますか?」

  

 「どっちでも良いですよ。まあでも、水無瀬さんの方だけだったら人は集まりますし、自分は今日思う存分配信したんでしなくて良いですかね……」 

 「わかりました、それじゃあ始めますね! お互いに頑張りましょう!」

 

 こうして、Adaと水無瀬しずくのSMではないがSMになりそうなコラボが始まった。 

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