第18話 ゲームセンター

 「はっ、この車を使うのはいつ振りなんだか」

 「そんなに外に出てないの?」


 「うるせぇ、文句を言うなら家の前にあるコンビニに言ってくれ」


 俺たち二人は俺の運転により車で20分程かかるゲームセンターに向かっていた。

 近場にショッピングモールに併設されたゲーセンはあるのだが、桜華が「ウェイブルパークの方が良いプリ機あるし、あっちの方がデカいからそっちが良い!」と駄々をこねたので仕方無くそちらに向かっている。

 

 免許は高校卒業と同時に取って、すぐに運転のしやすい軽トールワゴンを買ったが高校卒業と同時にSpeakに所属してしまい運転する機会が減った。俺は元々配信者として数字を持っていて所属した時のTwllterフォロワー数は4万人とか居たし、配信サイトのフォロワーに関しては6万人程居た。

 まあ、今のフォロワーは8万人程であれから全然伸びていないんだがな……

 まあでも、当時まだ小さかったSpeakには持って来いの人材で良く地方のイベントに呼ばれたりしていて各地を転々としていた。

 それに加えて免許を取ってから一年ぐらいして家の前の空き家が取り壊され、いつの間にか整地されて気付けばコンビニが建っていた。


 「それに、家の前にコンビニなんて出来たら普通に使いまくるだろ?」

 「まぁ……確かにそうだけどさ? 妹を助手席に乗せてるんだから、ちゃんと運転してよね」

 

 「任せろ、これでもちょっと前まで車のゲームをしてたんだ。総プレイ時間は2時間ぐらいだが……」

 「より不安にさせてどうすんのよ……」


 久々の運転で緊張したが、何とか何事も無く桜華の行きたがっていた「ウェイブルパーク」というゲームセンターに着いた。

 桜華は車から降りるとわざわざ俺の方に来て手を握って来た。

 

 「ほら、妹とデートさせてあげてるんだからエスコートしてよね?」

 

 可愛らしい上目遣い、いや身長差的に桜華とは10㎝くらいあるから上目遣いになるのは当然なのかもしれないが。 

 しかしこの上目遣い、こんなのされたら妹じゃなければ一瞬で惚れていただろう。

 まあでも、桜華は二人で出掛ける時はあたかも「この人私の彼氏です!」みたいな風に俺をマーキングしてるし、流石にもう慣れた。


 「ざけんな、お前が行きたいって言ったんだからお前がエスコートするんだ。エスコートしないなら俺はお前を置いて帰るぞ?」 

 「あぁ……! ウソウソ! 嘘だからちょっと待って!」


 「ったく、ほら行くぞ」

 

 俺は桜華の手を取り桜華を引っ張る。 

 指一本一本が俺の指よりも細くちょっと力を込めたら折れてしまいそうな細さだ。

 それに肌の色も俺より何倍も色白で、毎日手入れをしている事が伺える。


 「わっ、もううっざ! ほんと兄さんってムカつく」


 言葉では怒っているが声は照れている時のトーン。

 照れ隠しが下手くそな妹に若干面白くなりがらも俺は店内に入って行った。

 

 ~~~

 

 「兄さんとのプリクラ、嬉しい~」


 桜華が機嫌の良い声を上げた。

 桜華とプリクラを撮ったのだが、最近の流行りは何も分からない。

 ネットニュースには目を通しているから時事については分かるが、女子に受けるものに関しては何一つ分からない。

 見るとしては時々Twllterのタイムラインで流れて来る変なダンスぐらいだ。


 「てか兄さん、なんで小顔ポーズとか分かんないわけ?」

 「んなもん、ゲームしかやってない俺に分かるとでも? 全部アドリブでやってやったし、そもそもお前は俺にくっつきすぎなんだよ。多分だけど周りからはバカップルって思われてたからな?」


 桜華はプリ機の落書きスペースでずっと騒いでいた。

 騒いでいたという表現は良くないか、興奮していた。

 去年桜華が帰って来た時もプリクラを撮ったのだが、あの時の桜華は都会暮らしで疲れていたのか今みたく騒ぐような奴では無かった。

 どちらかと言うと清楚という印象の方が強かったし、兄さん呼びが清楚と言うイメージを強めたのだと思う。

 

 「良いじゃん別に、周りには迷惑かけてないし。それよりも! 兄さんもスマホに貼ってよ~!」

 「え? いや、俺は配信でスマホの背面映るし、集まりとかでもスマホ持ってくんだぞ? そこに妹とのプリクラ貼ってたら確実にキモがられるだろ……」

 

 「じゃあ彼女ってことにすれば良いじゃん。うちら年も結構近いし大丈夫だよ!」

 「そう言う問題じゃなくてなぁ……」


 押し問答は続いたが互いに折れる事は無く、最終的に俺のスマホカバーが透明なので間を取ってプリクラを貼らずにカバーの中にプリクラを入れるという事で解決した。

 わがままな妹には疲れるがたまに支えになるので俺はこの関係を良いと思っている。

 それに、桜華といると気が楽だし凄く楽しいしな。


 「12時か……飯でも行くか?」

 「うん、何かパスタ食べたい気分」


 「了解です。じゃあパスタ食いに行くか」

 「行くぜよ。兄さん」


 「何だその語尾。おもろ」

 「鼻で笑うな、バカにするな、兄さん」


 仲睦ましい会話をした後も会話は続ぎ、俺たちは楽しい話をしながら昼飯を食べに向かった。

 

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