第14話 コラボの行方

 「オフコラボ?」

 「そうです! 命令ですからAdaさんに拒否権はありませんよ?」

  

 『Ada、炎上確定』

 『こりゃ荒れるぞ……?』

 『オフコラボ、何するんやろ楽しみだな。オフコラボ絶対見る!』


 オフコラボってどういうコラボなんだよ。

 オフラインとかと同じ意味のオフならば、実際に会って何かするってことなのか?

 いやいや、そんなコラボをを企業に所属しているVtuberと無所属の俺がやったら100%炎上するだろ。

 でも自分が命令していいとか言ってしまって逃げ道は無いし、そもそも運営側が許してくれるのかどうかも分からない

 ああもう、俺はどうすればいいんだ。


 「い、いやその確かに何でも良いとは言ったけどさ? お互いそんなことしたら炎上しちゃうかもだし……」

 「えーでも、私のリスナーさんは皆良いって言ってくれてますよ?」


 おいおいマジかよ水無瀬リスナー。

 いやでもな、俺のリスナーでも一定層見てみたいって言ってる奴もいるし案外大丈夫なのか?

 このコラボに関しては企業様が良いって言ってくれない限り出来ないだろうし、もし何かあったらそれを盾にすれば良いか。


 「えっとじゃあ分かりました。するのは良いんですけど、企業様からNG出たらやりません」

 「えー、別に良いじゃないですか。一緒にルール破りましょう?」


 「ダメです。こんな事で炎上したくはないです」

 「流石に最後のはネタですよ! それぐらいわかってます!」


 良かった、これで保険はかけれたし企業が出た事でコラボもオンライン上での形に変えてくれるかもしれない。


 「じゃあ今からマネージャーさんに聞いてみます」


 んーまあ、保険かけれただけでもいいか……

 水無瀬さんはどうしても俺とオフコラボしたいらしい。

 こんなコラボ、どこの層に需要があるのか分からないが、水無瀬さんのリスナーからしたら、いつもと違う彼女が見られるから嬉しい人もいるのだろう。

 だがガチ恋勢だったら水無瀬さんが男と絡むのは嫌なのだろう。

 だから一定層嫌がっている人もいるのだと思う。


 「……はい。分かりました」

 「あ、マネージャーさんから連絡きました! アカウントBANされない程度だったら良いらしいです!」


 おいおい、企業さんよお! あんたの会社はどれだけ規制が緩いんだよ!

 え、通っちゃうの? この企画。

 いやいや、絶対ダメでしょ! 俺がマネージャーだったら連絡来た時点で100%許可しないし、まだ同性同士なら分かるんだけど俺男だよ!? 相手は女性だよ!?

 俺なんかがオフでコラボして良いの!?


 久々に情緒がおかしくなった、一回冷静になろう。

 今回の件、悪いのは俺だ。

 俺が冗談半分で喧嘩を吹っ掛けなければ起こらなかったことだし、俺が五回目の試合で情けを掛けずに勝っておけば適当に『じゃあDOCUP絶対優勝してください!』的な事を言って丸く収まったはず。

 なのに、俺が水無瀬さんの事を気遣い、そして試合に負けた。

 水無瀬さんが燃えるようなことを命令しないと過信し、尚且つ相手を気遣わなければこんな事にはならなかった。

 客観的に見ても、悪いのは俺だ。


 仕方が無い、これは素直に従おう。


 「わ、分かりました。やります、その細かい事は裏で話しましょう……」

 「やったぁ! ふふっ、憧れの人とオフコラボかぁ……!」


 『今着たけど勝手にコラボ決まってて草』

 『Adaさんが女性とリアルで絡み…楽しみやなぁ!』

 『どんなコラボになるのか想像つかん!ww』


 コメント欄を見る限り、批判的なコメントはあまり見受けられない。

 彼女の配信を見てみても、批判的なコメントは見えても2件ほど。

 2件という数ならば他のコメントに押し流されて見えなくなってしまったし、変な記事を書かれない限り大きな炎上にもならなさそうだ。


 「じゃあ今日はこの辺で終わっておきますか?」

 「そうですね。じゃあ裏で日程でも決めますか!」


 俺は水無瀬さんに相槌を打ち「お疲れさまでした。自分は抜けます」と言いサーバーから逃げた。

 

 「お前ら、俺どうすれば良いかな」


 『めっちゃ引きずってて草』

 『Adaさん、もう逃げ道は無いよ?ww』

 『コラボ純粋に楽しみ』


 ほんと、大きく燃えてないだけ嬉しいのだが、多分明日にはこの部分が切り抜かれてとんでもない事になっているだろう。

 切り抜かれてそれが伸びれば伸びた分だけ反響も大きくなる。


 変な事にならなければ良いと切に願う。


 「もういいわ、とりあえず今日は寝る」

 

 『ふて寝かwwお疲れ様!』

 『おつ~コラボ楽しみにしてるよ!』

 『しずくちゃんから来ました!配信面白かったです!』


 俺は配信終了ボタンを押し、配信を切った。

 そして、防音室から出て倒れるようにベットに入った。

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