第12話 タイマン
水無瀬さんと配信を始めて一時間ほど経った。
以前、配信に終わりは見えない。
俺も体力がある方なのだが流石に疲れが見えて来た。
今日は一日配信しっぱなしで疲れるのは当然なのだが、それよりも水無瀬さんのノリが凄すぎる。
「Adaさんって女の人に興味とか無いんですか?」
「俺はあんまりですかね……ゲーム一筋だったんで、それこそ学生時代も彼女とかいたことないですし、まともに話す異性っていったら妹ぐらいですかね」
「えーじゃあもし、私がAdaさんと付き合いたい!って言ったら付き合ってくれますか?」
とまあ、先ほどから話の内容は人間関係や恋愛面の話しばかり。
こういう話は個人配信でも話したことがないから、案外意外性があってファンからしたら話題になるのかな。
しかも、女性Vtuberとのコラボは人生初だし、最初の感じ的に視聴者もこういうコラボを求めていたのかもしれない。
まあだが、俺の考えでは大会に関して凄い熱心で個人練習に付き合って欲しいのかと思っていたのだが、そこは俺の見当違いだったらしい。
しかし、プライベートの話か。
正直な話、俺はあんまりプライベートに物を言われるのは好きではない。
思い出すのも疲れるし、学生時代マジでゲームしか記憶に無い。
それこそHEROXではないが、高校時代からチームに所属していたため、他のFPSのカジュアル大会にでまくっていた。そのため学祭などの大型イベントの記憶があまり無い。
まあ流石に、修学旅行の記憶はあるがな。
「えー、水無瀬さんとですか?」
「はい! 私って、結構いい女だと思うんですけど……どうですか?」
「んー、ノーコメントで」
「えー! ハッキリ言ってくださいよお……」
『さっきから攻められてるAdaさん見るのおもしろww』
『Adaさんって女の子の耐性ないよなwww』
『絶対ここ切り抜かれるだろw』
コメント欄もいつも攻めている俺が逆に攻められているのが面白いのか、悪い意味で盛り上がっている。
「じゃあ逆に、水無瀬さんは学生時代とか恋人いたんですか?」
「えっ、それは……」
『Adaさんの復讐が始まったか?ww』
『しずくちゃんって前に雑談で恋人いたことないとか言って無かったっけ?』
『もしかしてAdaさんしずくちゃんの切り抜きを見たのか?』
コメント、ナイス。
俺は目に入ったコメントを武器にさらに畳み掛ける。
「いやー、水無瀬さんあんなに大口叩くからきっと学生時代はモテモテだったんだろなあ。俺、リードされたいかもー、ねえ水無瀬さん?」
「……」
やべ、つい4KAGIと絡むときのノリでやってしまった。
黙っちゃったし怒ってしまっただろうか。
俺は心配になりながらも彼女の返答を待つ。
「あの、水無瀬さん?」
「ああもう、いないですよ! いたことないですよ! もう、Adaさんってほんといじわる! 分かって言ってますよね!?」
「いや全然知らなかったんですけど、めっちゃネタで言ったんですけど自爆ですか?」
「ああ、もう! Adaさんほんといじわる! 自爆とかありえない……」
「まあ、コメントで教えてもらったんですけど」
「はぁ!? もうほんと意味わかんない! いじわるすんな!」
「いじわるしてませーん、俺のプライベートを掘り下げるから悪いんですよーだ」
「ぐぬぬ……えーでも、気になるものは仕方ないじゃないですかぁ!」
水無瀬さんの反応が面白くてつい嬲ってしまう。
ノリ的にもネタと分かる反応をしてくれて、こちらとしても変な誤解を生まないためありがたい。
「あ、じゃあ分かりました。俺にタイマンで勝ったらイジるのもやめるし、何ならなんでも言う事聞きます。水無瀬さんが知りたいことなんでも教えてあげますし、逆に命令されたらなんでも聞きます」
「え、ほんとですか!」
「はい。でも逆に水無瀬さんが負けたら、ななにしてもらおうかな~」
「……いや、ここで引くわけにはいきません。いいでしょう! 受けて立ちますよ!」
こうして、俺が喧嘩を売った事により三本先取のタイマンが始まった。
流石に女マスターと現エクシャス元プロゲーマーでは大きな差があるのでハンデをあげる事にした。
ハンデとして俺は水無瀬さんが指定した武器しか使えず、尚且つヒットボックスが一番デカいガードナーを使うこと。
一方の水無瀬さんはケアパッケージ武器を除く全ての武器を使えて、尚且つヒットボックスが一番小さいヒールライナーを使う事となった。
ヒールライナーとは味方の体力管理を中心とするキャラで、味方に回復のキューブを張り付ける事でHPが徐々に回復していくというキャラ。
アビリティは専用のケアパッケージを呼び出すことが出来て、その中には最高レアリティの武器のカスタムや回復物資などが入っているというもの。
キャラバランス的にはもの凄く微妙なのだが、ヒットボックスが小さい分色々なキャラコンを駆使して使用している人がごく稀に存在する。
「じゃあAdaさんはサンセットとコンレイクでお願いします。私はAceTryとドレイクで行かせてもらうので」
「ふっ、中々厳しいですね」
「当然です! 私が勝って、さっきの恨みを全て返すのですから!」
「ハハハ……」
コンレイクとはショットガンのなかで一番弱いと言われている武器。
発射レートはショットガンの中で一番高いが、一発に含まれる弾を全て当ててもダメージが50しかでないし、内蔵弾数も5発という少なさのため弱いとされている。
AceTryとドレイクはどちらも似たような性能のSMGで内蔵弾はどちらも拡マガを付けて最大25発、そしてダメージも一発17と同じだが、AceTryは反動がほとんどない分ヘッドショット倍率が1.25倍。その分ドレイクは、反動が少し大きい分ヘッドショット倍率が1.5倍という差がある。
まあだが、わざわざ近距離戦でヘッドラインを意識して打つ人はいないから反動の少ないAceTryの方が使われる頻度は多い。
「絶対に勝って、Adaさんを服従させてみせます」
「奴隷になるのはどっちになるのか、楽しみになって来ましたね」
「わ、私が勝ってAdaさんのご主人様になってあげますよ! ほらわんちゃん?とか言って惨めに従わさせたいですねぇ……!」
「ふっ、そんなに自信があるのか、じゃあ俺が勝ったらわんちゃん以下の扱いで可愛がってあげますよ……」
「望むところです」
「望むところだ」
こうして、どちらかが奴隷になる闇のゲームが始まったのであった。
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