第7話 試合開始
「「「お願いします!」」」
三人の気合の入ったお願いを聞き、俺はコメント欄に目を向ける。
こちらの画面ではちょうど配信が始まった事になっていて、コメント欄には「こんばんは」などの挨拶が見られる。
一応事前に水無瀬さんの動画のアーカイブを少しだけ見たので、地雷は自ら設置しなければ大丈夫だと思うのだが、問題は風葉さん。
メンバーを調べなかった俺も悪いが、彼女については情報が一切ゼロ。
水無瀬さんに関してはキャラクターの容姿や性格、その他好きな物など事前にリサーチしたことにより基本情報は把握しているが、風葉さんに関しては何も語れることがない。
自ら地雷を設置しなくても、彼女の周りは無法地帯。
地雷がどこにでも埋まっていると考えた方が良いだろう。
そうこうしている内にカスタムはキャラクターのピック画面に入った。
風葉さんは『エリストス』という探知キャラで、良く初心者が使うキャラだ。
スキルで周りの敵の数やトラップの位置を探知できる。
アビリティは30秒間足が速くなり、そしてスキルのスキャンを3秒に一回打てるというもの。
nullさんは前回コラボした時と同じ『ガードナー』というキャラで、よく4KAGIが使っているキャラだ。
スキルは周りの攻撃を全て無効化するディフェンスドームを出すことができ、その中で味方の蘇生を行うと本来7秒程かかる蘇生が3秒で出来てしまう有能キャラ。
アビリティは防衛爆撃というもので、天空から約20発の爆撃を降らすことが出来る。
これは味方にも当たる仕様になっていて、大体は味方がダウンした時に相手を近づけさせないようにするためにドームを使ってから使用する戦法が一般的。
だがこのキャラはドームの使い方が何よりも難しく、プロでも使えない人は多い。
最後に水無瀬さんだが、水無瀬さんが使っているキャラは『ヴォイド』というキャラ。
このキャラは競技シーンでの使用率はかなり少なく、俺が出場した世界大会でも使用者は俺しか居なかった。
だがこのキャラ、極めれば強い。
このキャラが出来る事はスキルで虚空空間に入り一定時間無敵になるというもの。
スキルだけ見たら弱そうに見えるが、アビリティが強く亜空間ポータルは自分のいる位置をスタート地点として、自分が移動した位置に7つ、ポータルの入り口を作りだすというもの。
味方が入れば自分が最初に居た位置に戻って来るが、敵が入るとフラッシュ効果と足が遅くなるスロウ効果を付与した状態で、自分が最初に居た位置に出て来る。
このキャラの使い方は大まかに分けて三つあり、展開して車線を広げたり、ダウンした味方の回収、そして敵の誘拐など。
他にも高所を取りに行くための起点起こしに使われたり、最終アンチが閉じ切った時にスキルを使えばダメージをくらわないためアンチ耐久に使われたりなど様々な役になれるヴォイドだが、ガードナー同様使い方が難しいため競技シーンではガードナーより使われない。
だが、他のチームと比べてみるとキャラバランスはかなり良い。
さて、どんなプレイを見せてくれるのか楽しみだ。
俺は水無瀬さんと俺の配信を映しているタブの他にもう一つタブを開き、カスタムの全貌をリアルタイムで配信しているDO CUPの本配信をサブモニターで開いた後、メインモニターに映し出されている観戦画面を見る。
「ちょっとごめん、やっぱコメントに返信できないかもしれない。マジ俺がやらかした時だけコメント頼む。あとは、なんかワチャワチャしといて」
サブモニターで本配信を開いた際、コメント欄に目を通したが5分も分差があるせいか会話になっていなかった。
なので俺のコメントが伝わるのはまた5分後。
今は水無瀬さん達の健闘を見守ろうと決め、画面に集中し始めた。
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