第11話 玲香とサボり

「それでどこ行くんですか?」

「俺が何も考えてないと思うか?」

「思いますね」

「その通りだ。許してくれ」


 玲香と学校をサボる事にしたものの、何をするかやどこに行くかは全く決めてなかった。


「どこ行きたいとかあるか?」

「うーん特にありませんね」

「だよな」


 特にしたい事もないし、行きたいところもない。ただ、サボることだけ先走った哀れな子羊である。


「なら、大河君の家に行きましょうか」





 母も父も仕事なので、誰もいない家に彼女を連れ込む俺は最低である。親不孝とはこの事だろう。


「大河君の家、初めてです」

「そういやそうだな」


 冴との事で色々ごちゃごちゃになっていたが、玲香を俺の家に招き入れたり呼んだりすることはなかった。家に呼ぶことを親に言うと、何かと言われてウザいってのもあるし、冴の事もあったからな。


「俺の部屋、二階だから」

「じゃあお邪魔します」


 やはり女の子を呼ぶのは恥ずかしいし、二人きりということで凄く緊張してしまう。


「うわっ、凄いですね」

「まぁ、オタクだからな。ほとんどオタク関係に使ってるよ。あっ、玲香とデートするときもあるな」

「だから金欠なんですね。無理しないでもいいのに」

「ダサすぎるだろ、それ」

「そんな良く見せなくていいんですよ。大河君は、考えすぎです」


 その笑顔にドキッとしてしまう。思わず、玲香を選ぼうとする。しかし、今度は冴が邪魔をする。これじゃいたちごっこだ。


「玲香はさ、どう思う?」

「? どう思うとは?」

「俺についてなんか言いたいこととか不満とかある? あと俺の事、好きか?」

「そうですね……私は大河君の色んな事を独占したいです、知りたいです、分かり合いたいです。大好きですよ、大河君」


 玲香はいつも俺に対して大好きと言ってくれる。独占、と言うと愛が重いのかもしれないが、まぁとても愛してくれている。俺は、そんな子をないがしろにしてたのかと思うと罪悪感が襲ってくる。


「それは冴とかと絡むな、ってことか?」

「できれば、ですかね。友達なのでしょうがない部分もあると思いますが」

「俺と色んな事、したいのか。その……」

「もちろんですよ。大河君の全てを知りたいです」

「俺、そんな知識ないんだよなぁ」

「私もないですけどね、ふふ」


 あれ、君二次元から出てきた? と思うぐらいに玲香は俺の事を受け入れてくれる。冴とはまた違った距離感だ。まぁ冴も玲香も独占欲強いんだけどね。俺、刺されないかな?


「大河君、私我慢できないです。大河君、好き……」

「玲香、ごめんな。俺……」


 俺は、玲香の気持ちが受け止められずについにカミングアウトする――


「正直、冴と玲香で揺れてる」

「えっ、それって」

「ごめん。俺、冴がずっと好きだったんだ。だけど、玲香に告白されて付き合う事になって。それで玲香も好きになってきて、悩んでるんだ」

「そう、なんですか」

「俺はクソ野郎だ。だから俺を殴ってもいいし、罵ってもいい。離れるなら離れてもいい」


 ああ、俺はなんて言われるんだろうな。最悪、殴られても、拡散されても、軽蔑されても……文句は言えない。


「でも今は私の事も好き、というか気になってくれているんですよね?」

「ま、まぁそうだな」

「なら、私が全て塗り替えてあげます」

「んっ!」


 玲香は俺の唇をまた奪ってきた。あっ、やべぇ。堕ちそう。


 するとインターフォンが鳴った。俺たちは、いったん中断してモニターを確認する。見てみると、そこには冴がいた。


 玲香は、


「いいですね。望むところです」


 と不敵な笑みを浮かべながらこう言った。臨戦態勢だ。




 果たしてどうなることやら……




 

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【休載します】運命の赤い糸はどこに 向井 夢士(むかい ゆめと) @takushi710

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