第9話 好み
俺、冴、玲香は学校近くのカフェに来ていた。
「とりあえず俺が注文するからさ、2人は何にする?」
「私はえーとキャラメルフラペチーノのカスタム全追加かな。清野さんは?」
「私は普通のアイスコーヒーでいいですよ」
「俺も普通のアイスコーヒーにしようかなぁ」
「大河もそうするんだ……」
冴の好みは、若者世代らしいというか今どきの女子という感じだ。対して玲香の好みは、スタンダード。俺も昔は冴みたいな感じだったが、玲香と付き合い始めて好みが変わった気がする。
その後、3人で話していても
「そういえば大河君がおすすめしてたアニメ観ましたよ。ちょっとグロテスクですけど、ドラマがあっていい作品でした」
「でしょ。琢也におすすめされて俺も観たけど、マジで面白かった」
「えっ、何それ」
冴は色々とあって、そういったコンテンツに最近触れていない。それに疎遠になっていた冴と違って、約1年付き合った玲香との方が話が弾むときもある。
「俺はやっぱりスポーツは野球が一番だなぁ」
「大河は野球好きだよねぇ? でもサッカーこそ一番じゃない?」
「そういうスポーツで優劣は決めてませんけど……大河君に教えてもらった野球は、本当面白いです。あっ、もちろんサッカーも面白いですけど」
あれ? 俺と玲香って……
「大河はお笑いさ、めっちゃ好きだよね。この前のお笑い番組観た?」
「あぁ、観た観た! 最近のお笑いコンビだとイーストランドが面白かったな」
「だ、だよね!」
「そういえば、動画サイトで私も面白いコンビ見つけたんですよね。大河君にURL送っておきますね」
やっぱり俺と玲香って、相性良いのか?
そういった放課後を過ごし、家に帰るとすぐに冴から電話がかかってきた。
「どした、冴?」
「楽しくない」
「楽しくない?」
「私と大河ってさ……やっぱり合わないのかな」
今日の放課後、冴は終始楽しくなさそうだった。俺も冴に合わせようとしたところもあったが、それ以上に玲香が合っていた。
俺と玲香は付き合い始めてから、共通の趣味とかがあった方が楽しいと思って色々と布教した。そういった背景もあり、俺と玲香は共通の趣味が出来たり、お互いの好みが一緒になったりした。
「そんなことはない。俺は冴が好きだし、その個性も好きだよ」
「……そう? てか大河さ、家に親いる?」
「今日は、母さんも父さんも忙しくなりそうだからまだ帰ってない。遅くなりそうだって」
「ならさ、少しでいいから家行っていい? 今、近くにいるから」
「帰ってなかったのかよ」
すると、インターフォンが鳴った。モニターを見ると、冴が手を振っていた。いや近くにいすぎだろ、と思いつつドアを開ける。
「いや怖いわ」
「えへへ……来ちゃった。そんな長くはいないから。大河は迷惑?」
「そんなことはないよ。嬉しい」
そして俺の部屋で2人で話すことに。空も暗くなっている、っていうこともあって余計にドキドキしてしまう。
「何だかドキドキするね」
「そう、だな。それでどうしたんだ?」
「やっぱり疎外感っていうか色々感じちゃって。清野さんに大河が取られるんじゃないかって思うとさ」
ヤキモチを焼く冴は、とても可愛かった。やっぱり俺は、冴の事が大好きなんだと改めて思う。
「そんな事はないよ。俺は冴が大好きだ」
「ほんと? じゃあ証拠見せてよ」
そう言われて俺は冴にキスをする。ただどうしても玲香の顔がチラついてしまう。
「もっと色んなことしちゃう?」
冴の提案は本当に魅力的で嬉しい。玲香とそういう事をしなかったのも、冴がいるわけだったし。でもなんで。なんでなんでなんで。なんで今度は玲香が邪魔するんだよ……!
「それはめっちゃ嬉しいけどさ、一応高校生だからリスクもあるし。卒業してからとかに俺はしたいかな」
「そっか。まぁでも大河らしいかな」
違う、俺は逃げただけだ。
「じゃあ、ハグとかキスはしていい?」
「そりゃもちろん」
人間と言うのは本当にアホらしい。いや、単純に俺がバカなだけだ。結局、何も手放せなくて。何もかも失いたくなくて。本当に重要な時にその大事さを感じて。
「大河、大好き」
「俺もだよ、冴」
本当に俺はクソ野郎だ――
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