第80話

「なんだと……?? うぐっ」


 父さんの影は、激痛がするのか曲がった首のまま立ち上がる。


「ほひ? 立った……立てたの? でも、父さんの影。まだ首を戻さないほうがいいよー」


 我が妹よ!

 お兄さん少し怖いぞ。


「おにいちゃん? それじゃあ影斬りの刃取りに行こうー!」

  

 こっちは本物の妹。

 うん!

 では、行こうか!


「よっし! 誰だか知らないが、そいつも影斬りの刃争奪戦に飛び入り参加だ!!」 


 俺と妹は家の外へ出た。

 外の暗闇の中に影斬りの刃だけが宙を浮いている。

 そして、跡形もなく霧散した。

  

「あ、あれ……??」


 うぎっ! 辺りが暗かったからわからなかった。俺の影がいつの間にか傍にいる。


「そうだぜ。始まったんだ」


 俺の影が周囲の闇に溶け込んで言った。

 が……。


「うっぎーーー! って?? あれれ?? 消えた??」

「おにいちゃん。お腹空いた……」

 

 俺と我が妹が同時に首をかしげた。

 

 夜の闇の中で激しい地響きが、辺りを包み込んだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

虎倉街の偽と射影たち 主道 学 @etoo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画