第73話

 杉崎家の朝食はパンだった。

 杉崎のおばさんとおじさんと一緒に、やたらとラジオがたくさん置いてある一階のキッチンで、クロワッサンにフランスパン。ピザトーストにイチゴのホイップクリームのコッペパンを頬張った。

 いただいた飲み物の紅茶はオレンジペコだ。

 オレンジペコはその名の通りに……じゃなくて、オレンジの味はしない。市販されているのは、だいたいセイロン茶系の紅茶のようだった。


 ピザトーストをオレンジの味のしない紅茶で喉に流しこんで、俺は考え事をしていた。

 一体?

 俺の父さんは?

 確かにおばあちゃんから影に殺されたって聞いているのに……?!

 だけど、生きているはずだ。

 なぜなら、影が生きているんだ。本体は死んでいない。


「うーん……わからん。あと、影の世界へどうやって行こうか?」

「ほにいちゃーーん!! それより学校行こう!!」

「うぎっ! 今はそれどころじゃないんだーー!! 学校よりも影斬りの刃だーー!!」

「影洋くん。心配しないで、今日は祝日よ……」

 世話焼きの杉崎がコトリと紅茶のカップをテーブルに置いた。

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