第64話

 虎倉駅の改札口から一人の影が歩いて来た。

 まったく隙のない動きだった。影は俺の傍まで歩いてくると、スッと構えた。

 その構えはまぎれもない心影流だった。


 だが、誰の影かわからない!

 そこで、俺は様子をうかがうことにした。


「あんた誰だ?! 何故、ここに俺たちを呼んだ……?!」

「……」


 影は無言だった。

 が……?!


 影がそのまま上段回し蹴りを素早く打ってきた。

 俺は間一髪で躱した。


「心影流は二つといらない……私だけでいいんだ……影斬りの刃を渡せ……」


 影が一言漏らした。

 一度も聞いたことがない声だった……。


 あ、そうか!!

 この影は俺と妹を人気のない虎倉駅までおびき寄せたんだ!!

 虎倉駅の電車の一日の昇降量は日本一少ないかもしれない。

 たった三人だけなんだ。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る