第55話

 恵さんと公平が校門を通って行った。

 俺は少し立ち止まって書統高校の後ろ側を覗いた。

 無い!

 心影山が!

 やっぱりここは表の世界だ!!


 恵さんと公平が校門を通って行った。

 俺は少し立ち止まって書統高校の後ろ側を覗いた。

 無い!

 心影山が!

 やっぱりここは表の世界だ!!


 教室に入ると、みんな元に戻っていた。

 学校の先生も授業も全部いつも通りに時は過ぎていく。


 放課後になると。


「ふぁーーーー」


 大欠伸をしている俺は、今日は恵さんと公平と一緒に掃除当番だった。

 うん。今日も平和だ。


「影洋くん。聞いた? 昨日からこの学校の裏にあった山が忽然と消えたって……」

「うぎっ! それ本当ですか? 恵さん!? 裏にあった山って心影山?」

「うん……それにいつも夜だったのに、いきなり朝が来て……」

「???」

「今朝起きたら住んでいた屋敷がかなりこじんまりとしていて、黒かった肌も普通の色白になってて……私もびっくりしているけど、みんな不思議がっているわよ」

「ああ、俺もそうなんだ。朝起きたらこんな髪型になっててよお」


 なんて、不吉な!

 ここは一体……?

 単に影の世界から表の世界になっただけかーーー!

 でも、恵さんと公平……話し方が変?

 というか、元に戻ってるぞ!?

 もしかして、性格は元に戻ってる?


「なんか体の調子はいいんだがなあ。朝から誰かを殴ってスッキリしたくて仕方がないぜえ。まったく混乱するよなあ」

「私は朝から裁縫をしてくて仕方なかったわ」


 うーん。

 こっちまで混乱してくる。

 たぶん、影が表の世界の住人になってきているんだろう。

 

 うん。そういうことにしよう。 

 

 

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