第30話 心影山へ行こう

「お帰りなさいなませー」

「お帰りなさい」

「お部屋へと行かれるんですか? 影洋さま。夕食は8時からです」


 恵さんの家の使用人たちがお辞儀をしている。

 おじいちゃんとおばあちゃんも屋敷の扉の脇で、ちょこんと佇んでいた。


「うぎっ! おじいちゃんとおばあちゃん? なんで? 確か心影山へ行ってそこで落盤事故が起きたっていうから心配して明日行こうとしていたのに!」

「そりゃ、びっくりたまげたわー」

「ああ、ありゃ死ぬかと思ったなあ。うんで、今日の夕飯はまだかい?」


 ……


「まあ、無事で何よりか……おじいちゃんとおばあちゃんって田舎に帰ったんじゃ……そういえば、妹は?」


 ここは屋敷の二階の俺の部屋。

 おじいちゃんとおばあちゃんは少しボケているが、ぴんぴんしていた。

 表の世界では隠居生活のために田舎へ引っ越したはずだけど、影の世界ではどうなっているんだろう。


「うんにゃ。ここ影の世界でも田舎で暮らしているんだわ」

 おばあちゃんが不思議な事を言った。

「うぎっ?」

「影洋ちゃん。わしらは表の世界と影の世界でもどっちでも構わない人間なんじゃな。妹ならあんたの部屋の扉の……」


 おじいちゃん……何気に凄いこと言ってるし。


「おにいちゃんーーー!! 私を置いて行くなーーー!!」

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