第13話

「待て――!! 俺の影ーーーー!」

  

 自分で言っているのもなんだが……変か?

 確かに変だろうけど、命が関わっているんだ。俺は自分の影を一直線に追いかける。

 

 影は会館の広場から、そのまま比水公園を通り過ぎ。近くの住宅街に暗闇に紛れるよう姿を消した。


「俺の影―――! どこ行ったーーーー!!」

 

 あ、そういえば、おじいちゃんとおばあちゃんはどうしたのだろう?

 うぎっ! まさかこの影の世界では隠居生活するために田舎に行ったのではなくて、影に殺されてしまったっていうのか?


 ますます、影を追う俺の足に力がみなぎる。

「待て―――!!」

 それに、実家が消えたのは?

 わからないところが多いな?

 

 誰か頼むから教えてくれ!

 

 いや!


「教えて下さい女神さま! 今、俺は混乱しています!!」


 その途端、目の前に女神が現れた。


 その神々しい光は、住宅街の全ての暗闇を退けた。女神はこちらに寄って来ると俺の右手をそっと握った。


「あなたは今、混乱していますね。具合もわるそうです。でも、次第に治りますよ。私が保証します。影はあそこです。さあ、行って!! 戦いの時です!!」


「あざます!! 女神さま!!」


 俺は全速力で影を追い詰めた。

 ここは丁度、住宅街のT字路の左方向の行き止まりだ。

 影の後ろには空き巣が並ぶ。


 もともと、そこは表の世界でも空き巣だったんだ。

 

「ふん!」

 俺の影は鼻で笑うと、構えた。

 武術で勝負しようとしているんだ。


「はん!!」


 勿論、俺も構えた。今まで誰にも使ってはいけないといわれている武術。おばあちゃんから直伝された。その名も心影流だ。

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