第10話

―ー―――


 フカフカ、フカフカ、フカフカ……。


 チュン、チュン、チュチュン。


「ほひいちゃん! ほひいちゃん! 起きて!!」


 微睡みから目が覚める。

 妹の光がパンを頬張りながら、俺を起こしていた。昨日の夕食は豪勢だったな。フォアグラなんて初めて見たし、食べたっけ。


「おっはよー……うん?」


 そういえば、昨日は光が別々の部屋は嫌だといい。結局、同室で寝ることになった。天蓋付きのベッドがおあつらえ向きに二つあったので、そこで爆睡したんだった。


 正直、疲れていた。

 まだ、現実感がまったくない。

 辺りを見回しても……。


 至る所に置かれた高級そうな壺に、黄色い花が活けてある。大きい部屋の片隅に大型テレビがある。どこかしら清涼感溢れる花の香りがするんだ。


 そのテレビには、また天気予報が流れていた。


「今日は世界各地で……の祭りが……ありますね。いやはや、ここは影の世界ですからね。仕方がないんですよねえ。では、皆さん避難訓練は忘れずに。それでは今日の天気です。今日は時々、傘が降るでしょう」

 

 小春という気象予報士はやはり平然としていた。


「うぎっ! 傘ーーー!! 雨の間違いだろう!!」

「おにいちゃーーん! それより遅刻だよーーー!」

 部屋の中央の柱時計を見ると、午前9時!!

「恵さんはどうしたーー!!」

「ほえ、だって今日は日曜だから学校は休みだって……」

「……」

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