第9話

 屋敷の大扉を開けると、そこには使用人たちの種々雑多な頭があった。かなりの数の使用人は、みんな両脇にどいてお辞儀をしていた。壁面には絵画や骨董品などが飾ってあって、どれも高級感を醸し出している。

 大きなステンドグラスの窓が四方を囲んでいた。

 

「おかえりなさいませーー!!」

「おかえりなさいませ!! 夕食、お風呂は既にできています!」

「おかえりなさいませ! お荷物をお持ちいたしましょう!」


「ただいま~」

「お邪魔しまーす」

「……お邪魔します」


 使用人たちはまだかしこまっていて、その中央を恵さんが少し気怠るげに歩いて行って、大理石の階段を上っていった。俺と光はそそくさと恵さんについていった。


 踊り場にもどう見ても高価そうな種々雑多な骨董品が飾ってある。


「光よ。何も壊すなよ……」

「ほい。でも、おにいちゃんこそだよ! この前、家の花瓶割ったでしょう!」


 丁度、凄い部屋数の廊下の突き当たりに、ことさら大きな部屋が二つ用意されてあった。


「お客様用?」


 恵さんがお客様用のプレートがある扉を気怠げに開ける。


「好きに使って。お風呂は一階と自室にも付いてあるから」

「……ありがとな」

「ほい! ありがとうございます!」

「それじゃ、私は自分の部屋にいるから」


 恵さんが自室に戻ると、俺はあることを思い出した。


「あ! 町内会! 明日は避難訓練があったんだ!!」

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