Special days 04 最果てはまだ。


 ――終着駅に着いたとしても。見られることもないかもしれない。



 なぜなら始まり。ここから僕らは始まった。梅田の地下……ウメチカという場所で僕らは出会った。夏の眩暈の日。お空が泣いていた日。僕の心も同じ日だった。


 何も持たないはずだった。持っていたのは片道切符。


 最果ての誘惑が心に忍び、それでも先が見えない曇り空。心も同じ天候。諦めの心も忍び寄っていた。心はもう……疲れて闇の中へ。次に見たのは光。白い世界。


「ほら、着いたよ」と、聞こえる太い声。


 トナカイさんとの出会いは冬待たずに、七夕の雨上がりの日。僕にも少し晴れ間が訪れた日だった。悪いことをしても、それはきっと、今に繋がる道標だったの。


 まるで僕の悪業を斬るように、晴れ間も、心が躍ることも、繋がったの。見ればお花畑の中心に。例えば向日葵のように明るい声。明るい声が聞こえるようになってきた。だから目覚める。眠い目を擦りながらも。トナカイさんの温もりを感じながら。


 僕はパパの顔を知らない。


 その存在さえも知る由もなかった。トナカイさんというお友達に時折、パパの面影を重ねようとしても、パパというものがわからないから……寂しくて、お友達のままで、お友達を越えたまだ見ぬ境地も、覚悟の上の旅路。ちょっぴり意地を張っていたから……


 誰に? お母さんにだと思う。


 僕はもう子供じゃないと、女という部分に憧れにも似た背伸びだということに……そのコンプレックスを隠すように、昨日までのボッチから抜け出すキッカケと思ったから。


 そして下車する、まずはそこで。


 行く先は、まだ具体的には決まらずだけれど、歩くだけで、二人でいることが重要だと思えるから。トナカイさんの腕に、そっと腕を絡める。身を寄せながら、できるだけ。


「今日の千佳ちかは甘えん坊だな」と、トナカイさんは言うけど、


「ううん、女だから甘えたさんなの」と、今はその言葉が、精一杯の背伸びだったの。



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