第二章 Part4

ユキの帰りを待つミユキ達、そして数分が経過したある時、自動扉が開く音がした。


「あ、お姉ちゃん、戻ってき」


姉のユキが帰ってきた。そう思い振り返ると、そこにはユキではなく、白衣の男がいた。


「っ!」


司令室に来た白衣の男は、今までの白衣の男達同様、拳銃を所持していた。そしてミユキ達に向けて、引き金を引き、襲ってきた。


「あ…」


真由美は頭を撃たれ、殺されてしまった。


「ハッ!真由美さん!」


「ぶはっ」


そして理奈までも、心臓を撃たれ殺されてしまった。


「理奈さん!」


「…」


「(くっ、このままじゃ私も)」


白衣の男が、ミユキにも銃を向け、ミユキを殺そうとする。ミユキは何とか殺されない為に、司令室の機械の後ろに隠れようとしたその時、ミユキに向かって弾が発射され、ミユキの肩峰に当たった。


「キャ!アッ、イッ…」


弾に撃たれた衝撃で、機械の後ろに隠れられたが、ミユキは撃たれた為、当然ダメージを負ってしまう。


「…」


白衣の男がゆっくりと、ミユキに近づいてくる。白衣の男の視界にミユキが入ってしまった。そしてミユキに銃口を向け、ミユキまでも殺されようとした瞬間、後ろから一人の少女が、刀の峰打ちの部分で、白衣の男を気絶させた。


「ウッ…」


「ミユキ!大丈夫!」


「あ、お姉ちゃん、ウッ」


姉のユキが来てくれて、安心するミユキだが、白衣の男にやられた傷が痛み、まともに話せなかった。


「ミユキ!待ってて、今回復魔法を」


「ミユキちゃん!大丈夫!」


「あ、サオリさん」


ミユキの絶体絶命のピンチを救ってくれたのは、サオリだった。ユキが司令室から出て歩いている中、サオリと再会し、銃声が聞こえたので、司令室に走って移動してる際に、ユキのイメージの力で、念の為と、サオリの刀を創り、それをサオリに渡していた。そして、サオリが、その刀を使い、ミユキのピンチを救ったのだ。


「…」


「…お願い、治って」


ユキの回復魔法で、ミユキの傷を治すユキ、サオリも見守る中、徐々に傷が塞がり、ミユキの傷は、何事を無かったかのように、治った。


「!」


「ミユキ、どう?平気?」


「うん、大丈夫になった。ありがとう、お姉ちゃん」


「ううん。ミユキが無事で良かった。でもごめん、真由美ちゃんや理奈ちゃんを助けられなかった」


「…でも、お姉ちゃんやサオリさんのおかげで、私は助かることができた、それは紛れもない事実だよ」


「ミユキ…」


「そうね、ホントに、ミユキちゃんが無事で良かった」


その後三人は、施設に突入してきた水上警察によって保護され、無事に児童養護施設に帰ることができた。そしてこの三人は、施設からの唯一の生還者として、今回の事件を担当した特別チームによる、あの世界で何があったのかという、事情聴取を受けることになった。


そして現在、その日の事情聴取が終わり、施設で殺されてしまった人達のお墓に、花束を添えて廻っていた所に、フェイと、アスタの父親でもある神田貴志と出会ったのだ。


そして貴志に、アスタのことを聞かれた際に、ユキが答えられなかったのは、そういった情報は、極秘とされていたからだ。それともう一つ、ユキ自身も、今のアスタの事については何も知らなかったのだ。


〈現在〉


「…京介は、何故死なねばならなかった。私が、私がもっとちゃんと育ててやれば、京介(フェイ)も雄也君(アスタ)も、何故!」


貴志は、自身の無力さと何もできなかった悔しさを感じ。思わず涙を流してしまう。


「貴志さん……確かに、あの世界で起こった死や、こっちの世界で起こった死、どちらも決して報われる死ではないと、ボクも思います。でも、あの世界で生き、あの世界とこっちの世界で散っていってしまった人達の心、魂は、最後まで戦いぬいていったと、ボクは思うんです。決して報われる死ではなく、残酷な死だったとしても、彼らは戦いぬきました。京介君もきっと、最後まで諦めず、戦いぬいたと思います。もちろん、雄也君も、彼もまた、どんな状況でも決して諦めず、何もかも一人で背負っちゃうぐらい、彼は自分のやるべき事をしっかりと理解して、最後には、こちらと向こうの世界の二つの世界を救ってくれました。あの世界に行った皆、精一杯戦い、そして死んでいってしまった。でもボクは、そんな彼らを、ただ可哀想な死だけだと、そんな風に決めつけたくありません。彼らの死は、頑張って生きた証そのものだと、ボクは思っています。だから、彼らの分まで、ボク達は前を向き、頑張って闘い、そして生きていくことこそが、ボクらが彼らに与えられる、唯一の贈り物じゃないでしょうか」


「ユキ君…」


「私もそう思います。死んでいってしまった彼らの分まで、私達は前を向き、歩き続けることが、大事だと思います」


「ミユキ君…」


「共に歩いて行きましょう。彼らの分まで」


「…あぁ、そうだな」


貴志は、ユキとミユキの温かい言葉に癒され、涙をふき、前を向いて生きていこうと、心に決めた。


「京介達の分まで生きていかなきゃ、彼らに申し訳ないな。ありがとう、ユキ君にミユキ君」


「いえいえ」


「貴志さんが元気になってくれたのなら、良かったです」


「では、私はこれで失礼するよ」


「はい」


「二人共、気をつけて帰ってな。あ、そうだ、良かったら、コレを受け取ってくれないか」


「お守りですか?」


「あぁ、二人に渡したくなってな」


「ありがとうございます」


「どういたしまして、では、私はこれで」


「はい、さようなら」


「お元気で」


二人は貴志に手を振り、フェイの合掌を終え、児童養護施設へと帰ることにした。しかし二人が帰っている途中、思わぬ事に遭遇する。


「貴志さん、良い人だったね」


「そうだね……」


「?どうしたのお姉ちゃん」


「アスタ、元気かな」


「…アスタさんなら、きっと大丈夫だよ」


「…そう、だよね……!」


ユキは急に立ち止まった。


「ん?急にどうしたの?お姉ちゃん」


気になり声をかけるミユキ。そしてユキの視線の先をミユキも見ると、思わぬ人物がいた。


「っ!?」


「お母さん」

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