第二章 Part3
「なに、コレ」
ミユキは、向こうの世界で思い出した記憶と、もう一つ、こっちの世界で初めて思い出した記憶があった。それは、姉であるユキが、ミユキを庇って虐待されていた記憶だった。
「お姉、ちゃん」
ミユキは思わず涙を流した。だが、現実世界へと帰り、姉であるユキに会う為、ミユキは泣くのを止め、ミユキがいた部屋から出ることにした。
「ひとまず、ここから出ないと」
ミユキは部屋から出て、辺りを見回した。
「ここは、一体」
ミユキは、辺りが真っ白の通路をただひたすら歩いていた。
「…何もない、お姉ちゃん、どこにいるの」
そう言って通路を歩いていると、どこからかは分からないが、銃声が聞こえた。
「っ!?」
ミユキはバレないよう、角があれば隠れつつ、銃声が聞こえた方へと向かっていった。そして銃声が聞こえた場所の方へ着き、曲がり角から覗くと、一人の少女と、血まみれで恐らく撃たれたであろう男が倒れていた。そして白衣の男が一人。
「(ハッ!)」
「あ…あ…」
白衣の男が拳銃を少女に向ける。
「…!止めてください!」
ミユキは我慢できず、少女の方へ駆け寄ってしまう。そして男は引き金を引こうとする。
「…」
ミユキは少女を庇い、守りたいと思いながらも、死を覚悟した。男が引き金を引こうとした、その時。
「うっ」
「…!」
ミユキは死を覚悟した際、目を瞑っていたので、今何が起きたのか分からなかった。そしてミユキは、ゆっくりと目を開けた。そうすると、一人の少女と、剣を持ち、白衣の男を気絶させた少女がいた。
「!お姉、ちゃん」
そうミユキの窮地を救ったのは、姉のユキだった。ミユキは涙を流しながら、姉を呼んだ。
「ミユキ、大丈夫?」
「うん、ありがとう、お姉ちゃん。助けてくれて」
「そんなの当たり前だよ、ミユキが無事で、ホントに良かった」
「お姉ちゃん」
ユキもミユキも、お互いがお互いに会えたことで、嬉しさを感じていた。
「でも、何でお姉ちゃん、その剣を持ってるの?」
「あぁ、前にアスタと話した時があったでしょ?その時にあるドリンクを貰ってね。そのドリンクのお陰で、剣を生み出すことに成功したんだ」
「あぁ、あの時に、そうだったんだ」
「あ…あの、あなた達は、一体」
「ボクの名前はユキ。こっちは真由美ちゃん」
「私はミユキと言います。あなたのお名前は?」
「私、私は、理奈(リナ)、理奈です」
「理奈さん、素敵なお名前ですね。ちなみに、この人は」
「この人は、名前は分かりませんが、名も知らぬ私を庇って…」
「そう、でしたか。ですが、それで救われた命は確かにあります。それはあなたです。お姉ちゃんが来てくれなければ、私達二人共、殺されていました。この命、大事にしましょう」
「ミユキさん」
「…」
「…ミユキ、理奈ちゃん。ボク達ここに来る前、ここの地図に、司令室って書いてある場所があって、その部屋を探しているんだけど、二人はその司令室がどこか知ってる?」
「ごめんなさいお姉ちゃん、私は分からない」
「私も知りません。すいません」
「大丈夫。二人も一緒に、司令室を探しに行かない?」
「お姉ちゃんと一緒なら、私行く」
「私も、一緒に行かせてください」
「うん、分かった。じゃあ行こう。立てる?理奈ちゃん」
「あ、はい。ありがとうございます」
ユキは、目の前で人が殺されて、足がすくんでいた理奈に対して、優しく手を握ってあげていた。そしてユキ達は、この施設のどこかにあるであろう司令室を目指し、真っ白な通路を歩いていた。
歩いていると、銃声が何回か聞こえたので、司令室を目指しながらも、ユキは、白衣の男達を気絶させながら廻っていた。だが、白衣の男達を気絶させたのは良かったが。この世界に帰ってきた生還者達は、ユキ達が見た限り、ユキにミユキ、真由美に理奈以外は、全員殺されてしまっていた。
そして、施設内を歩いて廻っていると、ようやく司令室と書かれた部屋に着くことができた。
「ここか」
ユキが扉の前に立つと、その扉は自動扉だった為、自然と開いた。
「…」
ユキは辺りに白衣の男がいないか、確認しながら、辺りを見ていると、あの世界を調整していたコンソールを見つけたので、コンソールの前まで行き、操作を行なった。
「…これかな」
「待ってお姉ちゃん、ここに魔力バリア解除って項目があるよ。多分これを解除しないと、助けは来れないと思う」
「うん、分かった。解除っと」
ユキは、ミユキにそう言われ、魔力バリア解除ボタンを押した。そうすると、施設を覆っていた、魔力によるバリアがなくなり、助けを呼べる形となった。
そしてユキは、解除されたことを確認し、コンソールにあったキーボードを使い、助けを呼んだ。
「よし、これであとは、助けを待つだけ」
「やっと、帰れるんだね」
「うん、やっと」
これでようやく、元いた場所に帰れる。皆がそう思い、安心していた。安心している中、ユキはまだ、現実世界で会えていない、アスタとサオリを探しに行くことにした。
「ボク、ちょっと見てくるね」
「どこに行くの?お姉ちゃん」
「アスタやサオリちゃん、それとまだ生きてる人がいないか、確認してくる」
「…分かった。気をつけてね、お姉ちゃん」
「うん」
そう言うと、ユキは司令室から出て、アスタやサオリ、それとまだ生きている生還者がいないか確認しに行った。
「お姉ちゃん、大丈夫かな」
「あの人なら、きっと大丈夫ですよ」
「…そう、ですよね」
ユキは強い、力だけじゃなく、他の面でも、それは分かっていても、やはり妹としては、姉のユキが心配だった。そうして、気付かぬ内に、数分が経過していた。
数分たったある時、自動扉が開いた音がした。
「あ、お姉ちゃん、戻ってき」
姉のユキが帰ってきた。そう思い振り返ると、そこにはユキではなく、白衣の男が立っていた。
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