第二章 Part1

二〇三〇年六月二十一日、二人はお墓参りに来ていた。その二人とは、ユキとミユキである。二人はあの世界からの唯一の生還者として、生還できなかった者達一人一人に、花束を置きながら廻っていた。


そして、次に合掌するのが、京介(フェイ)の番という事で、京介の所へと向かっていると、一人の男が先に合掌していた。


「…」


「あの、あなたもフェイ、いや、京介君のお知り合いですか?」


「…君達は」


「ボクの名前は結生(ユキ)です。こっちは妹の美雪(ミユキ)です」


「こんにちは」


「君達は、京介の何なんだ?」


「友達です。児童養護施設で出会いました」


「…そうか、京介にも、女の子の友達がいたんだな。あ、申し遅れたね、私の名前は、神田貴志。神田京介の父です」


「京介君の父親だったんですね」


「あぁ、ある意味、雄也君(アスタ)の父親でもあるけどね」


「…そう、ですか」


「君達、児童養護施設と言っていたけど、雄也君(アスタ)とも知り合いかい?彼の事は何か知らないかい?」


「知ってますよ。宮村雄也君、彼とも友達だったので」


「おお、そうか。今はどこにいるか知っているかい?」


「…すいません。それは、ボクにも分かりません」


「あぁ、そうか」


そう、現実世界に生還できたのは、ユキにミユキ、そしてサオリ、あの世界から生還できたのは、たった三人だけだった。ゲータを倒したアスタは、今もなお、現実世界の施設にあるカプセルの中で眠り続けていた。他の者達はと言うと、ゲータに洗脳された職員達によって、殺されてしまっていた。


「(君が救った世界だよ、アスタ。向こうの世界も、こっちの世界も)」


三人が生還できた時、向こうとこっちの世界では、何が起きていたかと言うと、現実世界の時間で、およそ三日前。


〈三日前、向こうの世界にて〉


「ハァー!」


「ガァー」


モンスターの核を的確に破壊していくサオリ。


「ハァー!」


「ガァー」


そしてこちらも、モンスターの核を破壊していくユキ。


「ハァ、ハァ」


「大丈夫?ユキちゃん」


「うん、大丈夫。アスタもきっと、今頑張ってる。だからボクも、倒れるわけにはいかない」


「ユキちゃん…そうね、私達も頑張らなきゃね」


「うん!」


アスタが頑張っているならと、自分に言い聞かせ、自らも倒れるわけにはいかないと、固く誓っていたユキ。そんな中、また再び、階層全体に警報音が鳴り響いた。


「?」


「これは」


「只今をもって、第一負荷実験を終了といたします。繰り返しお知らせします。只今をもって、第一負荷実験を終了といたします」

そうお知らせが入ると、残ったモンスター達は、ダンジョンへと戻って行った。


「アスタ…」


「終わった、のか」


「勝った、勝ったぞー」


「おおー!」


プレイヤー達は、自分達が勝利したと、歓喜に浸っていた。


「良かった、勝ったんだね。アスタ」


アスタがゲータに勝った、そう確信したユキは、ホッと安心した。


「終わったのね、ユキちゃん」


「うん、やっと、これで」


ユキがそう言った次の瞬間、ユキ、ミユキ、サオリを含めた二十人のプレイヤーは、黄色い光に包まれ、元の世界へと帰って行った。


「お、なんだこれ」


「きゃ、なんなのコレ」


「皆さん!っ!私も」


「お姉ちゃん、終わったね」


「うん」


「二人も、一体この光は」


「大丈夫だよ。この光は、決して害のあるものじゃないから」


「じゃあ、この光は一体なんなの?」


「これは、元の世界に帰れる、戻るための光だから、安心して」


「元の、世界?」


「向こうに行けば、きっとサオリちゃんにも分かるよ」


「…」


ユキの言った言葉が、今のサオリにはあまりピンとこなかったが、大切な友人であるユキの言葉を、サオリは信じることにした。


「分かったわ、ユキちゃん。向こうに行っても、また会えるよね?」


「うん、会えるよ」


「そう、なら良かった」


そう言うと、サオリは黄色い光に包まれ、消えていった。


「お姉ちゃん、これで帰れるね。元の世界に」


「うん、そうだね」


「お姉ちゃん」


「ん?どうしたの?」


「向こうに行っても、私のお姉ちゃんは、ユキお姉ちゃんただ一人だよね?」


「うん、もちろん!」


ユキは笑顔で答えた。その笑顔を見て、ミユキも安心した。


「良かった」


二人が会話を終えると、ユキもミユキも、皆と同じように、黄色い光に包まれ、ゲータが創造の力で創った世界から消えていった。


「…」


そして、現実世界に帰ってきたユキ。


「んっ、う~ん」


ユキが目を覚ますと、そこは白い天井に、白い壁の、四角形の一人部屋並の広さの部屋だった。


「ここは、帰ってきたのか、ホントに」


ユキが思っていた現実世界のイメージとはかけ離れていた為、ユキは少し混乱していた。


「…?これは、カプセル?」


ユキは、人一人が入れるぐらいの、カプセルの中で目を覚ました。


「よっと」


ユキは起き上がり、カプセルの中から出た。


「皆はどこにいるんだろう」


ユキは隣にもカプセルがあることに気づき、そのカプセルを見るが、中には誰もいなかった。そのカプセルは、誰かが既に、カプセルから出た後の状態だった。


「…」


ユキは目の前にあるドアの前まで行き、ドアを開けようとした次の瞬間、部屋の外から銃声が聞こえた。


「っ!?」

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