第一章 Part11

映像の発信源を特定し、第十五階層へと着いたユキとミユキ。


「着いた。まさかまたここに来ることになるなんて」


「でもあの時に比べれば、敵の数も少ないし、これなら大丈夫だよ」


「うん、そうだね。じゃあ、行こうか」


ユキは剣を抜き、ミユキに合図した。


「うん!」


その時、フェイク映像を流した者達は、作戦を進めていた。


「おい、そっちの状況はどうだ」


「まもなく目標の位置に着きます」


「了解した。くれぐれも、ヤツは殺さぬようにな」


「分かっています。では」


「ふん、順調に事が進んでいるな」


「あぁ、後は…」


「応答願います!」


「ん?どうした」


「襲撃を受けています。二名ですが、何者かは不明です」


「なに、…」


「助けてください、このままでは我々も、うわ!」


「ん、おい、どうした」


「君が今回の首謀者か」


「!?その声」


「今からそっちに行く。逃げずに待ってるんだね」


そう通信があると、連絡は途絶えた。


「…まさかヤツが」


「引き時だな」


「そうだな、今のうちに逃げ…」


「逃がさないよ」


「!?貴様、いつの間に」


「…」


「くっ、ハァー!」


部下の一人が、敵わないと思っていながらも、ユキに剣を振るった。


「っ!」


ユキは敵の攻撃を軽々避け、部下の一人に剣を振るい、無力化させた。


「うっ!」


「…」


「君には聞きたいことがある」


「ふん、答えると思うか?」


「あぁ、君は答えてくれる」


「ふっ、どうかな」


「こうすれば、ね」


「?」


ユキが行なったことは、この男の左腕を斬り落とすことだった。


「うっ、アー!」


「さあ、答えてもらうよ。後、元のデータも渡してもらう」


「データ?何のことかさっぱりだな」


「…そうか」


ユキはそう言うと、男の腹に剣を刺した。


「うっ、ぶはっ!」


「渡す気になったかな」


「…ふん」


「?」


「これだ」


男は意外にも、すんなりデータを渡した。


「これが」


「お姉ちゃん、外にいたヤツらの無力化は終わったよ」


「ありがとう。ミユキ、このデータが本物かどうか、確かめられる?」


「うん、任せて」


ミユキがそのデータを調べると、本物のデータ、映像であることが分かった。


「お姉ちゃん、このデータは本物だよ」


「分かった。ありがとうミユキ」


「お前ら、こんな、事をして、ただで済むと思うか」


「君が喋らなければ済む話だよ」


「ふっ、仮に俺を殺したとしても、また新たな脅威が、お前らに降りそそぐことになる」


「ならボクは、その脅威を全て叩き潰す、アスタや、アスタ以外の人に危害に及ぼすのなら、ボクは君達を許さないし、君達の脅威とやらを確実に潰していく」


「そうか、なら俺は、ここでお前らを逃がすわけにはいかないな」


「?」


「自爆魔法!」


「っ!?ミユキ!」


ユキはとっさの事で、瞬間移動より、ミユキを守ることに頭がいっぱいになり、ミユキを守る為、ミユキを庇った。


「バースト!」


第十五階層の洞窟で、大きな爆発が起きた。その頃アスタ達は、男の仲間達による襲撃を受けていた。


「誰だお前ら」


「名乗る必要はない、お前ら、やれー」


そう言うと、部下達は、一斉にアスタに襲いかかった。


「っ!ふっ!はっ!」


だが、アスタはそんな部下達を、特に苦戦することなく、倒していった。


「うわー!」


「くっ、やるな、だが、我々の目的は達せられる」


「なに」


「くらえ!」


「!?」


敵の狙いは、アスタではなく、ヒナへ向けられた。


「ヒナ!」


アスタは何とかギリギリの所で。ヒナを助けることができた。が、ヒナは右腕を怪我してしまった。


「ヒナ!」


「私は、大丈夫だ。それより、ヤツを」


「…ハァー!」


「くっ、ぶはっ」


「ハァ、ハァ」


「ふっ、まあ、目的は達せられた」


「なん、だと」


「お前といると、皆不幸になる」


「!?」


敵はそう言うと、白い光に包まれて、消えていった。敵の消滅を確認すると、アスタはすぐ、ヒナの元に駆け寄った。


「ヒナ!大丈夫か」


「あぁ、なん、とか」


「良かった」


「だが、右腕が、結構…」


「っ!ヒナ!」


ヒナは右腕のダメージによって、気を失ってしまった。アスタはヒナを抱え、病院へと連れていった。病院に着くと、部屋まで案内され、その部屋には、ユキとミユキもいた。だが、ユキは魔法よるダメージを受けていた為、眠っていた。


「っ!?ユキ!」


「…!?アスタさん。それに、!?ヒナさん」


その光景を見て、アスタは先程敵に言われた言葉を思い出していた。


〈「お前といると、皆不幸になる」〉


「俺のせいで…こんな」


アスタはヒナをベットに寝かせ、一人考え込んでしまった。


「アスタさん、ヒナさん、大丈夫ですか?」


「あぁ、命に別状はないって。そっちこそ、ユキは大丈夫か?」


「はい、お姉ちゃんの怪我も、命に別状はないと言われました。でも、心配で」


「そうか」


「お姉ちゃん、私を庇って、こんな事に、私が、私がいなければ…」


「…ミユキ。そんな事言ったら、きっとユキは悲しむと思うぞ、ユキは、妹のミユキが無事なだけで、きっと嬉しいと思ってるさ」


「アスタさん、ありがとうございます」


「あぁ、それに、今回の件、きっと原因は俺にある。俺がいたから、ユキやヒナはこんな目に」


「アスタさん…それは違うと思います。お姉ちゃんもヒナさんも、きっとそんな事は思っていません。今回の件は、ここにいる誰のせいでもない、ヒナさんもそうですが、お姉ちゃんなら、きっとそう言うと思います」


「ミユキ…ありがとう」


「いえ、私達はチーム、仲間なんですから」


「あぁ、そうだな」


「んっ、う~ん」


「あ、お姉ちゃん。良かった」


「ミユキ、ごめんね。心配かけて」


「ううん、お姉ちゃんが無事で良かった」


「…ありがとう、ミユキ」


「ユキ、大丈夫か」


「アスタ…うん、ボクは大丈夫だよ。アスタはどうしたの?」


「ヒナがちょっと、怪我してしまってな」


「!ヒナちゃん」


「でも、命に別状はない。だから大丈夫。それに、…ユキも無事で良かった」


「アスタ…ありがとう」


「うん」


「アスタも無事で良かった」


「あぁ、ありがとう」


「うん!」


ユキは笑顔で答えた。


「…」


「…」


「あ、そう言えばアスタさん」


「ん?どうしたんだ、ミユキ」


「少し気になっていたのですが、アスタさんはどうやって、この世界が、真に私達が生きる世界じゃないと気づいたんですか?」


「あぁそうか、確かに、二人にはまだ話してなかったな」


「もし大丈夫なら、聞かせてもらえませんか?」


「あぁ、話すよ。俺が知る限りの事を」


アスタは、イナイから教えてもらった事、自分の記憶について、ユキとミユキに話すことにした。

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