第一章 Part4

記憶を取り戻したアスタは、イナイに伝える為、連絡するが、イナイからの返信がなかった。


気になったアスタは、ウィンドウを開いてイナイの位置を確認すると、イナイは第四階層へと移動していた。


アスタはそれを確認すると、急いでテレポート盤に向かい、今アスタがいる第一階層から第四階層に向かった。


「イナイさん」


イナイの無事を祈りながら、アスタは急いだ。一方イナイはと言うと、イナイは今に至る前に、ある事を行っていた。


〈数分前〉


イナイは謎の穴を造り、そこから自らの秘密基地へと向かっていた。そう、謎の穴の正体は、イナイが作り出した穴の事だった。


二度と帰ってこれないのは、そこから帰るイナイが閉じてしまうからだった。


異変に気づいたイナイは、しっかりと穴に入ってしまった者を帰していた。


秘密基地と言うのは、第十七階層の洞窟とはまた別の、第二階層のダンジョンの中に造っていた。


そして謎の穴は、イナイのいる所からなら、どこからでも出現させることができるが、第一階層では見つかると考え、第二階層へと謎の穴を出現させたのだった。


イナイの能力は、謎の穴を造るだけじゃなく、今いる場所から、行ったことのある場所なら、どこへでもワープできると言うものだった。


秘密基地で用事を済ませたイナイは、しっかりと謎の穴を閉じ、ワープでアスタのいる所へ戻ろうとしたその時、後ろから剣で胸の辺りを貫かれてしまった。


そして現在、イナイはその者から逃げていた、第二階層から第四階層へと。


〈現在〉


「ぐはっ、まさか、この世界に内通者がいたとはな、しかも奴が、うっ、ふっ、私はここまでのようだな。アスタ君、君に重い荷物を背負わせてしまい、すまない」


「イナイさん!」


「アスタ君、うっ、」


「イナイさん、一体何が」


「アスタ君、どうやら私は、ここまでみたいだ、後の事は、頼んだ、アスタ君」


イナイはそう言うと、アスタにある紙とキューブを渡し、アスタの胸をぐっと掴み、アスタに全てを託した。


アスタは託されたものを全てしまい、瀕死状態のイナイに必死に呼びかける。


「イナイさん!」


「アスタ君、逃げるんだ。私を殺そうとした奴は、恐らく君も狙ってここへ向かって来ているはずだ。だから、君だけでも」


「嫌だ、もうこれ以上、命を失うのは!」


「アスタ君」


このままでは二人とも殺されてしまう。そう考えたイナイは、アスタの手を握り、自身が持っていた能力や魔力をアスタに分け与えた。


「イナイさん、これは」


「アスタ君、我々は、君まで失う訳にはいかないんだ」


魔力を分け与え終わり、イナイは最後の力を振り絞り、アスタを風魔法でダンジョン内の川がある穴へと逃がした。


「っ!」


「アスタ君、後は、頼んだ」


「イナイさん!」


アスタはダンジョンの川へと落ちていった。


「ぷはっ、イナイさん!」


大声で、イナイの名前を呼ぶが、上からは何の返事も返ってこなかった。


「イナイさん…」


アスタはフェイだけでなく、イナイも失ってしまった事により、ショックを受けるが、イナイだけでなく、フェイにも、この世界を託された事を感じ、その責任を感じはじめ、めげるのを止め、イナイから託された物を出してみることにした。


そこには、先程渡された一つのキューブがあった。


アスタは気になり、キューブのボタンを押してみると、キューブが起動し、中から一人の少女が、光に包まれて出てきた。アスタは驚きながらも、中から出てきた少女を受け止める。


「おっと、この子は一体」


アスタは戸惑った、こんな時どうすれば良いのか。そこでアスタは、イナイが言っていた事を思い出す。この世界では人でも物でも、おでこに触れれば、それまでの経緯やプログラムだったりすれば、どんなプログラムなのか分かると言う。


アスタはそれを思い出し、少女のおでこに自分のおでこを重ねてみることにした。すると、少女の記憶の中を見ることができ、少女が何者なのかを知ることができた。


少女の名前はヒナ、イナイとはまた別のプログラムの一部だ。ヒナの役割は、イナイと同じくこの世界に捕らわれてしまった人達を出口まで導く案内人。


だが、イナイとは違い、戦闘経験がない為、初めは戦いには向かないが、経験を積めば、良い戦力にもなりうる。


アスタはそれらの情報を、ヒナを通して知ることができた。そしてアスタは、いつ何が起こるか分からない為、念をいれ、ヒナとのフレンド登録を済ませた。


「んっ、う~ん」


「お、目が覚めたか?」


「ん、アナタは?」


「俺の名前はアスタだ、よろしくな」


「アツュタ、アツタ」


アスタは少し笑いながら答えた。


「違う、俺の名前は、アスタだ」


「アスタ」


「そう、アスタ」


そう返すと、アスタは一旦ヒナを降ろした。

するとヒナは、挨拶を始めた。


「初めまして、アスタさん。私は、アナタ達プレイヤーの皆様を、外へと逃がす為に作られた、プログラム二号、ヒナです」


「さんなんていいって、俺の事はアスタって呼んでくれ。あと、敬語もいいって」


「…わかり、分かった、アスタ」


「おう!」


そう言うと、ヒナは少し笑みを見せた。


「とりあえず、宿に来てくれ、ここじゃ寒いしな」


そう言うとアスタは、ヒナを連れて、アスタの住む宿へと、ワープを使い、帰っていった。宿へと帰ってきたアスタとヒナは、食事をとりながら、コミュニケーションをとることにした。


「ヒナ、この食べ物分かるか?」


「分からない、何て言うんだ?」


「これはカレーライスって言うんだ。一緒に食べよう」


「なぜ、一緒に食べるんだ?」


「その方が美味しく食べられるからな、二ヒヒ」


「そうなのか、分かった」


アスタとヒナはそんな会話を交わしながら、食事に入った。そしてアスタは、気になった事について、ヒナに聞くことにした。


「なあヒナ、少し気になってる事があるんだけど、聞いてもいいかな」


「ああ、私の知ってる限りの範囲でいいなら、答えられるぞ」


「この世界で死んだ人間は、向こうの世界ではどうなるんだ」


アスタは、この世界が真に生きる世界じゃないと知らされた時、一つの可能性を考えていた。それは、フェイが生きてるかも知れないという可能性だ。

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