第一章 Part5
「この世界で死んだ人間は、向こうの世界ではどうなるんだ」
アスタはヒナに問いかける。フェイが生きているかもしれない可能性に賭けて。
「この世界で死んだ人間、すなわち接続を解除されたプレイヤーは、ゲータのエネルギーになるか。施設の外である海に捨てられてしまうかの、恐らくこの二択だろう」
「そうか…(フェイが生きている可能性は、零に近いのか)」
アスタは、ヒナに聞くまで、フェイがもしかしたら生きているかもしれないと言う思いを抱いていたが、そんな考えは、ヒナの発言によって打ち消されてしまった。
「フェイ…」
「フェイ?誰のことだ」
「俺のたった一人の友達で、たった一人の、親友だ」
「…死んでしまったのか」
「ああ、巨大なモンスターに殺された」
「そうか…」
「でも、フェイに、イナイさんが俺に託してくれた意志は、死んでない」
「意志?」
「ああ、俺にはその責任がある。だから、俺は前に進まなきゃいけないんだ」
「そうか、それが、アスタの、君の決意か」
「ああ、そうだ」
「…うん、ならば私も、その決意についていこう、まあ元から私は協力するつもりだったし、今更かもしれないが、君の、アスタの決意を聞いて、尚更ついていきたくなった」
「…ヒナ」
「私はとことん君に付き合うぞ、アスタ」
「ありがとう、ヒナ」
「なあに、私達はもうパートナーだ。これぐらいするさ」
「…あ、そうだヒナ」
「ん?どうしたアスタ」
「ヒナ、君はイナイさんの協力者って、誰だか知っているか」
「さあ、私は知らないぞ、そのイナイという人から、紙か何か貰わなかったか?」
「紙?…あ、そう言えば」
アスタはそう言うと、自身のアイテムストレージから、イナイから授かった物の中から、紙を探した。そして見つけだし、手紙を見た。そこには、イナイの言っていた、協力者の名前が書いてあった。
「これだな、協力者、協力者、え~と、あ、あった、ケイル?この名前、どこかで…!!思い出した、コイツはフェイを殺したあのモンスターの名前だ。でも、何で…!!なあヒナ」
「どうした?アスタ」
「ヒナ、人を、人間をモンスターに変えることは、この世界では可能なのか?」
「そうだな、ゲータの力なら恐らく可能だ」
「でも、ゲータの能力って、創造と操作の2つじゃ」
「それは恐らく、ゲータの代表的な能力なのだろう、なにせ、世界から世界を次元を超えてやって来るほどの奴だ。他に能力を持っていても、何ら不思議じゃない」
「つまり。俺達が知らない能力で、ケイルさんは、モンスターに変えられてしまった、そう言う事なのか」
「ああ、恐らくその通りだろう。ゲータという奴は未知数の存在だ。他にも何か能力があるかもしれない」
「なら、今よりもっと強くならないとな。それに、イナイさんが言っていた覚醒の力も気になる」
「覚醒!?アスタ、お前、覚醒の力が使えるのか」
「え?いや、イナイさんから言われたんだ、俺の中に覚醒の力があるって」
「アスタに覚醒の力が、これは、勝てるかもしれないぞ、ゲータに」
「俺が、ゲータに…」
「これは希望が見えてきたぞ」
アスタに覚醒の力があると知ったヒナは、アスタを覚醒状態でも戦えるようになってもらう為に、ヒナはアスタにダンジョンで戦おうと特訓を進めた。
「早速で悪いがアスタ、お前、明日の予定は?」
「ん、明日は、いつも通り、ダンジョンで戦うつもりだ。何でだ?」
「なら良かった、アスタには、これからの戦いで覚醒状態の力をモノにしてもらう必要があるからな」
「ああ、そうだな」
「それとアスタ、もしまたモンスターに変えられてしまった人間と戦うことになったら、どうする」
「今の俺じゃどうしようもできない。…!?まさかヒナ、何か方法があるのか!?」
「ああ、あるぞ、ただ、今はないけどな」
「ん?どういう事なんだ?」
「作るのさ、モンスターに変えられた人、人間に戻す武器を!」
「武器か、どんな武器なんだ?」
「一言で言うなら、体には無害の剣だ」
「無害の剣?」
「まあ、出来たら見せるよ」
「分かった」
「そろそろ時間だな、アスタ」
「そうだな、そろそろ寝ないとな」
アスタとヒナはカレーライスを食べ終わり、各々が今やるべき事を話し合いながら、二人はベットに入り、夜は明けていった。そして日が昇り、新しい朝がやってきた。ヒナは武器を作りに。アスタはレベルアップのため、ダンジョンに向かった。
「じゃあ、また後で」
「ああ」
ヒナはアスタを見送った後、武具屋へと向かった。そしてアスタは、ダンジョンに入り、例の場所へと向かって行った。
「さて、今日はどうしますかね。とりあえず第一階層から攻めていきますか」
そう言うとアスタは、第一階層から順調に第二、第三、第四階層へと進み、第四階層のボスを倒した後、第五階層へとたどり着いた。
「(第五階層…本来なら、あのレベルのモンスターは第五階層には存在しない。それ程の強さだった。何で、あれ程のモンスター、いや、ケイルさんが現れたんだ?分からない、何かの実験だったのか?)」
「考え事かい?」
「っ!」
アスタは、考え事をしている時に、急に話しかけられ、反射的に、その人から距離をとった。
「良い反応だね」
「…誰ですか。アンタは」
「自己紹介がまだだったね。僕の名前はユウマと言う者だ」
「!?ユウマ!あのランキング一位の」
「ああ、一応僕がランキング一位のユウマだ」
「ランキング一位のアンタが、どうしてここに」
「ちょっとした散歩さ。君こそ、こんな所で考え事かい?」
「ああ、ちょっと…」
「まあ、深くは聞かないよ。でも、ダンジョンにいるからには、警戒していないと危ないぞ」
「ああ、分かってる」
「…では、僕はこれで」
そう言うとユウマは、ダンジョンの奥へと去っていった。
「あれが、ランキング第一位の、ユウマ。ユウマか」
「あれが、アスタか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます