4日目:不死者の皇帝はヒシズ王国へ向かう

後編:侵攻と世界征服(4~14日目)

33:侵攻開始

 皆様、あけましておめでとうございます!

 本年もよろしくお願いします!


 残りの一ヶ月、五万文字を走りきります!!!

 応援のほどよろしくお願いします!

 新作もどうかよろしくお願いします!(今日より毎日朝7時投稿です)

 https://kakuyomu.jp/works/16817330668066613679

 ◇


 心地よい波の音が聞こえる。神に見放された世界とは思えぬほどに安らかで、戦争などとは程遠いと思えるほどに穏やかだ。


 辺りはまだ暗い。日が沈んで数時間、まだ日の出には早すぎる時間。しかし俺らは準備を整えており、今から出立するのだ――残り11日しかないこの命を終わらせないために。


 何もしないより何かをして、何かをするより何かを成し遂げるべきだ。


「アリア、ツァトリー、ヴィル、モミジ。俺らはこれからアルカ大陸へと

 向かう。準備はいいな?」

「「「はいっ!」」」


 そう問いかければ、元気よく返事が返ってくる。


「さて、じゃあ早速――」

「陛下ああああああああああ!!!!!!!」

「……この声は」


 意気揚々とこの地を離れようとした瞬間、遠くから声が聞こえた。しかもなんだか聞き覚えがある。


「偉大なる陛下にお仕えしておりますハクティノめをお忘れですか!? いや絶対忘れていましたよね!?」

「……うん。ごめんね」

「ガーン!?」


 全身真っ黒になったハクティノは、この薄暗い夜であまりにも見づらすぎた。夜目がなければ本当に見えなかっただろう。……あ。いいこと思いついた。


「ツァトリー様も置いて行ってしまうし! ひどいです!」

「ん。まぁしょうがないよね」

「まぁまぁ。俺はハクティノに任務を与えようと思うんだ。だから侮蔑はナシで」

「ん、わかった」

「へ、陛下……! 任務をお与えくださるのですか!? この不肖ハクティノ、身命を賭して遂行致します!」

「あぁ。君にはこれから――スパイとしてアルカ大陸で諜報活動をしてほしい」

「了解です陛下! 諜報活動ですね……ってえぇ!?」


 驚くのも分かる。こんなにうるさい奴が静かに行動するのは無理があるだろ、と。しかしまぁ、服装は真っ黒だし忠誠心があるなら……良い気がする。捕まってもなんとかしてくれそうだし。


「というわけで一緒に海を渡るぞ。街についたらお前は単独行動しろ。一人が寂しいならなんかいい感じの不死者アンデットをお供につけてやるから」

「……お願いします」

「それは良かった。創造:〈潜影殺骸シャドウスカル〉」


 実は上級不死者アンデットは意思疎通ができるものが多い。俺が今まで創造してきた中で、言葉を発したのは全部上級なはずだ。……アリアたちはよくわからないけどね。


「……アラ、可愛イオ嬢様ネ。ヨロシク。ワタシノ事ハ気軽ニ『キルボネ』ッテ呼ンデチョウダイ」

「あ、はい。よろしくお願いします!」


 仲良くなれたみたいでなによりだ。

 ……というか何気に自分から名前を名乗ったのは始めてだな。そんな感じの存在ならばなおさら安心できるけどさ。


「陛下、あちらを見てくださいっ」

「どうしたアリア――」


 突然声をかけられ、見た先にあったのは、小さいながらも眩しく輝きを放つ太陽だった。

 空はさきほどよりも少し青白くなっており、世界も明るく染まっていく。


「もうそんな時間か。じゃあみんな! アルカ大陸に向けて出発だ!」

「「「おー!」」」

「創造:飛空運骨ムーボーン


 乗り物となる不死者アンデットを創造し乗り込む。形は新幹線の先端のようであり、見た目が骨であることを除けば少しばかり近未来的だ。


 そしてゆっくりと動きだし、空へと飛び始めた。


「すごい、すごいなこれは!」

「ん……ヴィル、もしかしてこういうの好きなの?」

「もちろん! 空をかけるのはいつだって楽しいものですよ!」

「そうだったね。昔からヴィルは空を……懐かしい」


 空の旅は思い出話に花を咲かせたようだ。二人の過去か……気になるな。いつか知る機会があればいいんだが、無理に聞くわけにもいかないからな。


「そうだアリア。ゲーテってどんな街なんだ?」

「そうですね、あそこは漁師の街でして、生の魚が食べられるということで有名です。それに温かいので冬の間も賑わいます。ただヒシズ王国は政治腐敗が激しいことでも有名なので、よっぽど魚が食べたい人かクズかしかいないと思います」

「そうか……生の魚……モミジ。この世界に来てから食べたか?」

「いや、ないでござるな。そういう機会はことごとく逃しているでござる」

 

 一応この身体はものを食べられることは確認している。味も感じられる。そういうところはしっかりとチートスペックなのがありがたい。


 食べるのもいいけど、世界征服の足がかりをしっかり作らなくちゃな。頑張るぞ!


 [地獄行きタイムリミットまで――残り10日]


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