23:みんなとの会議

 近未来な機械に囲まれた謎の部屋。その真ん中にあるテーブルに座る我が配下たち。モミジの話も終わり、もう用はないはずの場所にいる理由。それはこれより会議を始めるためだ。


「アリア、予定は覚えているな?」

「はい。二日目から四日目明朝にかけて、様々な形で侵略のための準備をすることになっています。詳しく言えば不死者アンデットの創造に関してだったり、剣術の訓練だったりですね。そして四日目明朝にはアルカ大陸へ出立、その後は未定でした」

「よろしい。さて、今言ってくれたのが転生して初日に考えた予定だったわけだ。……君たちとの出会いや色々で全部狂ったけどね!」


 それは別に嫌味などではない。むしろちょうどいいとすら思っている。


 魔術に造詣が深いツァトリーにヴィル。

 太刀術の免許皆伝であり、卓越した強さを持つモミジ。


 彼女らと出会えたことは良かったと理性で理解出来ている。


「というわけで、これからの俺の予定と皆の予定について話そうと思う」


 俺はおもむろに立ち上がり、皆の注目を集める。


「まず。今日は自由だ。といっても明日に向けて準備をしてほしいが、何かを強制するものではない。食べるもよし、水浴びもよし、鍛錬も勉強もよしだ。あ、俺は図書館で勉強するつもりだぞ」


 最後の言葉でアリアとツァトリーの表情が変わった気がする。……もしかしなくても俺のとこに来るつもりだな?


「次に明日について。この身体はとても物覚えがいい。ということでツァトリー、それとモミジに稽古をつけてもらいたい。それも半日ずつで」


 真面目に話を聞いていた二人だが、俺がそう言った途端に顔を強張らせた。それと同時に困惑、驚きも感じ取れる。

 関係のないもう二人も驚いているような雰囲気だ。そっちは半日というう方に反応しているのだろうと思う。


「朝日が昇り始める時刻から十二時間。そこからまた十二時間。ツァトリーとモミジ、どちらが先に教えるかはまた後で決めるとして。とにかくそういうスケジュールだ。二人共、それでいいか?」

「ん。いいよ。ネビュトスのためなら」

「拙者も構わないでござる」

「じゃあ話は終わりだ。アリア、ヴィル。四日目までに侵攻計画を練っておいてくれ。夜明け前に発表の形で会議を行う。問題ないな?」

「えぇ。もちろんです」

「任せてくれ」


 ほんと、頼もしい仲間がいるもんだ。やはり彼女たちを失う訳にはいかない。そのためには俺がもっと強くなる必要があるな。


 やるべきことは変わらない。


「さぁ、時間はない。各自行動開始だ。今日の間は図書館にいる。明日の明朝には玄関のホールで待ってるからな」


 そう言い残して俺は足早に部屋を出る。


 少し歩いて後ろを振り返り、誰もいないことを確認した。

 そして――――全力のダッシュをし始めた。


 まるで世界が風になって流れていくような光景に感嘆しつつも、やるべきことを脳内で組み上げ始めた。


 まずは散策がてら不死者に関する本を探す。次に魔術系統への造詣を深める。最後に歴史や土地など、兵法に関する本を探して勉強する。


 優先度で言えばそんな感じだろうか。歴史などに関しては最悪アリアに聞けばいいが、流石に何でも聞く訳にはいかない。自分でも勉強する必要がある。


 そんな事を考えているうちに、あの機械で奇怪な扉の前に辿り着いていた。


 それを開ければ既にそこは図書館。

 少し歩けば、あの美しい空中回廊が見えた。そこから差し込む光はもうオレンジ色に染まっていて、影の黒とオレンジのコントラストがえも言われぬ綺麗さで、どこか寂しい気持ちにさせる。


「おっと、いけないな。感動している場合じゃないんだった……」


 非常に心苦しいが、自分の為だと言い聞かせて足を踏み出す。


 あと数時間……ありったけの知識を詰め込んでやる。

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