7:図書館の幽霊《ゴースト》
「えぇぇ!?」
思わず後ずさりしてしまう俺。
「ん、譲ってくれるんだ? ありがと」
中性的な声でそう呟いた
その姿はまるで学者のようにも、学生のようにも見えた。
髪は短く色は紫――というより
まぁ、全部半透明なんだけれどね。不思議~。
「おい、あんたは誰だ? ここは俺の城なんだが」
「あぁ、君がこの城の主なんだ。ボクはツァトリー。よろしくね。それじゃ」
「ちょっと待て、まだ話は終わってないぞ」
「えー、ボク早く読みたいんだけど」
「お前、
すると露骨に嫌な顔をされた。
「ボクがそんな低級な
「じゃあ何だって言うんだ?」
「えーっとそれは……そうだ。そんな態度ってことはただの
明らかに舐め腐ったような態度だ。見た目も中性的で男か女か判断が出来ない。そして一人称は「ボク」。つまり、男の娘なのか!? ――いかん余計な事を。
論点をずらして言い負かそうという魂胆は見え見えだぞ? あいにく知ってるんだよねぇ種族名。
「俺は最上級
「くっ……なんで知ってるんだよ。教えられたのか……?」
「ん? お前は俺の種族を知ってたのか?」
「いや何でもない。君はちゃんと知ってたんだなって思って」
「そうなのか……」
俺が困惑すると深い溜め息をつかれた。ひどくない?
「しょうがないからこの本は君に渡すよ。ボクは他の本を探すから」
「おいおい話は終わってないって。なぁツァトリー。俺の配下にならないか? そうしたらこの本を読ませてやる」
「……一つ、質問がある。答えて」
面倒そうな表情から、一気に真面目な表情へと変わる。
その菫色の瞳は俺を射抜くかのように凝視している。
「君は、何を目的にこの世界にいるの?」
「俺はこの世界を征服する。全てを俺のものにする。そして皇帝として君臨する」
「どうしてそんなのを目指すの? 普通はそんな事、考えないよね」
「この世界の女神にそう命じられたからだ」
アリアから、「この世界において女神は偉大で絶対」だと聞いている。
だからこう言えば大抵はどうにかなるだろうという目論見だ。
「そっか。ねぇ、女神様の事、どう思う?」
「俺はクソだと思うね。目的を与えられたのはいいが、それに必要な何もかもが与えられてない。おまけに期限付きで出来なかったら地獄行きだと。そんなの誰が好きになるか」
「それを聞けて安心したよ――じゃあさ、配下になったらおやついっぱい食べさせて。それなら配下になってあげてもいいよ」
意味深な事を聞くわりには欲望丸出しである。
しかし問題はない。俺は皇帝だ。どんな者も受け入れてみせよう!
「あぁ、それでいいぞ。契約は成ったな。【
すぐに
頭の上には光輪が見える。背中からは薄っすらと翼も。
数秒後、光輪は首元へ移動した。そして全身の光は弾け飛んだ。
首元には黒いチョーカーがあった。
「ん。ボク、降臨っ!」
そしてシュタッ、という音が聞こえてきそうな決めポーズで登場した。いい性格してるじゃねぇか。
「せっかくだし俺の実験に付き合ってくれないか。賢そうだし色々役に立ってくれるだろうと思って」
「ボクが賢いように見えるぅ? えへっ、嬉しいな。じゃあ付いて行ってあげるよ~」
これで配下をゲットだぜ。
内心で笑みを浮かべながら、俺らは中庭へと向かった
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