4:《支配》
「グノア帝国、元帝城メイド隊所属のアウレリア……ちょっと待て、情報量が多すぎて何もわからん。一旦整理させてくれ……」
「あ、はい……わかりました……」
数分の間、頭で情報を反芻し整理していた。
目の前には銀髪でロングヘアーな美少女メイド。赤いルビーのような綺麗な瞳をこちらに向け、じっとしている。
メイド服を着ているため、説明されなくともメイドであるのは理解することができた。
そんなメイド服は、白と黒を基調としたもので国章のようなものが左胸の辺りについている。胸元が少し開いていたり、腕も半分以上は見えているが、下半身は長い白タイツを履いているのでほとんど露出はない。
グノア帝国、というのは国の名前か。恐らく俺が征服する国だろう。それで元所属、か。何らかで辞めることになったんだろう。うむ。
「――よし、オーケー。理解したぞ。それでアウレリア。お前はなぜここにいる?」
「えーっと……それは……」
なんだか話したくないような素振りを見せているがそんなもん知らん。
「とにかく話せ。命令だ」
俺は
「わ、私は偉大なる皇帝、トムアト=グノア皇帝陛下にお仕えするメイドの一人でした。メイドに採用されたまでは良かったのですが、ある日陛下にお食事をお運びした際に見初められてしまったのです。メイドが夜伽にお呼ばれする事は普通ですしおかしくないと思っていましたが、まさか私が、夜伽どころか側室に指名されるとは思ってもなかったんです……」
アウレリアはそこで言葉を区切って扉の方――恐らく帝国がある方向を向いた。
「それに皇帝陛下は、顔は整っていらっしゃるのですが、その性格があまり好きではなく……この世の全てが自分のものであるかのような立ち振舞い、大帝国の君主としては必要かもしれませんが、1人の男としては別です。その
……なるほど。だから先程実験台という言葉に過剰反応したんだな。
なんだが申し訳ないことをしてしまった。
「他のメイドも私を異端者を見るような目で見るばかりで助けてくれず、実家の家族も重い処罰を受けたと聞きました。そして私は魔術によってどこかの地へ飛ばれる事になったのです。処刑じゃなかったのは良かったんですが、ここを1人きりで彷徨うことになりまして」
昔話は終わりだと示すように、彼女はこちらに向き直る。
「ここで数日生活していたらあなたに出会ったってわけなんです」
そこまで言い切ると、深く深呼吸をした。
「――はっ! 言うつもりじゃなかったのにこんなに長々と……! どうして!?」
「あぁ、それが俺が
「え? ど、どういう事ですか? そんなの初めて聞きました……」
「それとごめん。言いたくないのは分かってたけどそこまでとは……」
「いえいえいいんですよ。骸骨という見た目で怖がっちゃいましたが、意外といい人なのが分かりましたから。こう見えても私、人を見る目はいいんですよ?」
片手は自らの目を指差し、もう片手は腰に当ててドヤ顔をしている。「えっへん」と聞こえてくるような気がするくらいにドヤってる。
しっかし美少女がやると可愛いもんだなぁ……。宝石のような瞳があるからなおさら映える。
「それは良かったよ。これからよろしくな、アウレリア」
「はい! ……えっと、なんとお呼びすれば?」
「おっと、それもそうだったな。今は適当に陛下とかでいいよ」
「名前を教えてくださらないんですか……?」
「そんな悲しい顔をするなって。俺はこの世界に女神に召喚されたばかりで名前も何もないの! そんなに呼びたいならアウレリアが考えてよ」
「いやいやそんな恐れ多い……!」
うわすっごい嫌そうな顔……でも知らん。俺は人の心がわからん
「いいから! じゃなきゃ陛下呼びだぞ?」
「う~ん……じゃあネビュトスとかどうですか? ペットの名前とか考えるの好きだったんですよ!」
「ネビュトス、か。いいな、気に入った。それはそれとして俺がペットみたいだってぇ?」
「違います違います!!! そんなつもりはなかったんです!」
「まぁいいや。んじゃ改めて――」
俺はアウレリアに近づき手を差し出す。
「よろしくな、アウレリア」
「こちらこそよろしくお願いします、ネビュトス皇帝陛下」
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