49:シトルインの王は(第三者視点)
「陛下っ! 報告がございます!」
「誰だ。騒々しいぞ!」
大きな音を立て入ってきたのは一人の文官。額には汗が滲んでいることから走ってきたのがわかる。
そこはかの皇帝の部屋とは大きく違いとても質素な部屋だ。無骨と言えるだろう。しかしその王自体は皇帝と真逆であった。
ヒゲを生やし、筋骨隆々で、獅子の如き威圧感。その拳一つで万物を壊してしまいそうなほどだ。
「現在ヒシズ王国に対し
「なんだと。それだと我が国も――いや、ヒシズは最低最悪の国。きっと天罰か何かであろう」
「なるほど……! 女神様がついにお怒りになったわけですか!」
国王の安易な判断に文官は安堵の表情を浮かべた。
「それで、他に情報はないのか?」
「諜報部隊からの情報があります。どうやらその主犯の名はオシアス皇国を名乗る者たちだそうです。皇帝の名前までは調べることが出来なかったそうですが、かなりの強者であるとの証言が報告に上がっています」
「ほう。――そいつと俺、どっちが強い?」
普通の人であれば、「皇帝」がいかに最強だとしても「あなたです!」なんて即答してしまいそうなものだ。だが文官は恐れを見せず、冷静に質問に答える。
「Aランクの冒険者が数秒で殺されたという事例を鑑みれば、かの者の方が優れているかと」
「なるほどな。
「同感です。ちなみに諜報部隊は何らかの原因によって通信は途絶。グノア帝国や我が国との街道も巨大な岩によって完全に封鎖されています。海路も大型
「……もし我々が救援に向かったところで、全滅するのは間違いないだろうな。まぁ、もとより助ける意味も義理も何一つないが」
食料などを輸入していたのみで、いなくて困ることはない。むしろ邪魔者が消えて清々した――そう言いたげな表情を国王は浮かべている。
「しかし、我が国は攻められることになるのだろうか。自ら道を塞いだということは、即ち道を開く手段があるということかもしれぬ」
「ただヒシズ王国を滅ぼして終わり――なんて甘い考えはいけませんね。失礼しました」
文官は思ったことを述べたが、途中で理想論であると気づいたようだ。彼もまた、国王の側近であるが故に性格をよく知っている。
「では作戦会議と行こうか。招集をかけろ」
「はっ!」
文官が後ろへ振り向き部屋を退出する。
そして数十分。二人きりで寂しかった部屋も、十人の部下によって埋まってしまった。
「これより、御前会議を始める」
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