第2話 新たな世界新たな人生

 あれ、俺どうしてたんだっけ。



 「お父さん、カナ産まれたわよ!男の子よ。」

 「本当か!?見せてくれ!」

 「わあああ!本当だ、弟だー!」



 何やら騒がしいけど、ひょっとして俺は今赤ちゃんになっているのか?周りにいるのが家族で、お父さん、お母さんそして、お姉ちゃんもいるのか。

ん!?、てことは俺本当に、異世界に転生してきたのか!?



 「名前は男の子だから。」

 「ソウ。なんてどうだ。」

 「ソウ、いいわね。格好いい名前だわ。あなたは、ソウ。マットウ・ソウよ。」



 目の前の母らしき人物が俺に向けて名前を言ってくれた。

 ソウ。我ながら悪くない名前だ。見たところ、貴族か名家なのか裕福そうな家庭の家に見える。家族の格好も主張が強過ぎない落ち着いていて気品を感じる、お洒落な貴族服って感じだ。家の内装もちょっとした豪邸とまではいかないかもだけど、それなりの屋敷の様な構造に見える。

 貴族がいる世界か。一体どんな世界なんだろうか。とりあえず、赤ちゃんのままじゃ何もできないか。うん。ある程度成長するまで気ままに過ごすしかないか。



───月日は流れ俺が産まれから5年───



 流石貴族。5歳から英才教育を受けるなんてな。だが、父親の教え方、褒めて伸ばす教育方針が良いからなのかそこまで嫌にはならない。そして勉強の時間以外でも自分で家の書庫などからこの世界のことを少しでも理解しておくため、様々な本を読んでいる。

今のところ分かってることと言えば、


 まずこの世界には魔力というものがある。前世の世界には無かった代物だ。そしてこの国の文明レベルは中世のような、よくあるパターンだ。だから自動車なんて便利な物も無無ければ、科学技術なんて言葉すらないような世界だ。ただ、移動手段がないわけではない。自動車の変わりに馬車がある。凄く雰囲気と味があって良い。是非ともいつか乗ってみたい。他にも異世界ならではと言うべきか、剣技というものがある。前世の日本でいう剣術みたいな感じか。


と、こんな感じでこの世界の価値観や初歩的な常識から学んでいっている。ちなみに6歳になったら、剣技と魔力の訓練を姉と一緒に親父から受けるらしい。誕生日が6月の16日だからもうすぐか。


 そして6歳になった。早速訓練が始まるのだが、まずは現時点でどれくらいの魔力量があるのか量る。これは一家庭では量れないため、央都にある魔力測量教会に行かなければいけないらしい。ここで言う教会は宗教の教会とは少し違うらしい。詳しいことは俺もよく分からない。家から央都は少し距離があるため馬車に乗って、親父と姉と俺の3人で向かう。お母さんはお留守番だ。


 央都に着くと、様々な人が行き交っている。買い物をしにきている人や、学生と思われる制服に、剣を腰に着けてある鞘に収めている姿や、露店の商人、など前世の世界で言う首都のような賑やかでわくわくする明るい雰囲気が感じられる場所だ。央都の中央には女神様を崇め奉っている巨大な石像に、その石像の前方に丸い円形型をした巨大な泉がある。目に移る全て目新しく、前世でも家の村周辺でも見たことがない物だらけだ。


 自然と湧き出る高揚感で、胸がさっきからずっと高鳴りっぱなしだ。父に連れられながら央都の街中をずっと見ていると、気づけば目的の魔力量を量れるという教会に着いた。


 中に入ると、薄い青色を基調とした落ち着いた雰囲気だ。そう辺りを見ていると、教会のご老人が一人こちらに向かって来た。



 「これはこれは久しぶりですな。マットウ殿。今日は・・・お子さんの魔力を?」

 「ああ、久しぶりだなバントウ。子供二人ともの魔力をそろそろと思ってな。」

 「それはさぞ、二人ともマットウ殿の才能を受け継いで魔力が高いかもしれませんな。」

 「はは、それは間違いない。それじゃカナの姉の方から頼む。」



 それから、父さんとご老人は少し話を交わした後、「分かりました。」とご老人が言い、姉を教会の祭壇らしき物のとこまで誘導する。その祭壇の上に置いてある大きな鏡の様な道具。どうやらあれで魔力を量れるらしい。その魔力を量る道具に姉が利き手をかざす。

 せっかく異世界に転生してきたんだ。それに女神様に選ばれたと言っても過言じゃない。だとするとやっぱり俺TUEEE系主人公みたいに、人間離れした魔力量を生まれながら持っていてどんな敵も・・・・。



 「こ、これは!?確かに凄い魔力量ですぞ!それもまだこの年で!」

 「カナは魔力量が多いのは密かに感じてはいたがやはりか。」



 どうやら姉の魔力量は凄いらしい。魔力量の基準は大まかに10段階ある。成人の大人の平均が大体3~4。一段階の差でも全然変わってくるらしく、一般的には5でも十分高いとされている。そんな姉の魔力量は10段階中4らしい。しかも、魔力量は個人差があるとはいえ成長と共に増えていく。

 これこの後俺の量るの?何かこれだと相当魔力量ないと衝撃度欠けるよね。俺TUEEE系で間違いないよね?凄い不安なんだけど。

 俺も教会の人に祭壇の前まで来るよう促され、魔力を量る道具に右手をかざす。



 「おおお。息子さんの方も姉程多くはないですが・・・それでもこの年で2は多い方なのではないでしょうか。」

 「そうだな。やはり二人とも魔力量は申し分なさそうだな。」



 不安的中。てか何か想定してたのと違うぞ。じゃああれか、成長スピードが早くて最終的に魔力量が多くなるとかか?

 でも、だとしたら今頃身長が伸びるのが早くてもっと身長が高いはずだし、頭が良くて物事の理解が早かったりしそうだけど、特別そんなことは感じないし・・・。

 これひょっとして、俺TUEEE系じゃない?


 家での剣技の訓練も、圧倒的姉の方が優れている。いろんな意味で唖然として、開いた口も塞がらない。お父さんが治めている近くの村の外に資材で伐採をしている森林があるのだが、その中でも一際目立っている大木を姉は難なく切って見せた。姉と対決もしたが手も足も出ない。自分なりにいろいろ試行錯誤しながら戦って後一歩惜しい場面もあり、自分が特別弱い訳でもない。父との訓練でもダメ出しを受けたこともなくむしろ褒められてるぐらいだ。ちょっと姉さん強くない?

 これからの成長に期待するしかない・・・か。


 結局、俺TUEEEでもばければ俺よりも姉さんの方が強く何より・・・。




 ── 姉が強すぎる。──

 

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元罪人異世界にてその人生をやり直す。 コウリュウ @mekk

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