元罪人異世界にてその人生をやり直す。

コウリュウ

第1話 極悪犯罪者

 何も覚えていない。俺何か捕まるようなことしたのか?


 時既に遅く俺はいつの間にか刑務所内にいた。俺の判決もどうやら死刑らしい。

 囚人の飯を配膳している看守の人がやけに優しい口調で教えてくれた。


 「なあ、聞きたいことがあるんだが。」


 その優しい看守に思わず疑問をぶつけた。それは、俺が一体何をしたのか。他の人に聞こえないぐらいの小声で、優しい看守は答えてくれた。


 「なんだ。あまり長居はできないぞ。」

 「俺は何をして捕まったんだ。」


答えにくそうに看守の人は顔をしかめた。


 「本当のこと言やお前は何も悪くない。悪いのは我々、警察だ。俺が何もしてやれなくてすまない。」


 申し訳なそうに涙声になりながら謝る看守。どうして看守の、警察の一人の人が俺に謝るのか分からない。だがそれを聞く気力ももう今の俺にはない。

 看守の言葉から俺の希望はないことを悟る。

どうやら死刑は免れそうになさそうだ。


──そして死刑執行当日──


 俺は、暴れることができないよう後ろから二人の警察に背中に手で抑えられ腕を引っ張られている。目の前には天井から吊るされた縄。俺は抵抗もせず、そのまま前に進んだ。 



 

 ここは一体。俺は確か、

記憶を辿って思考を巡らせようとしたとき。目の前から女性の声が聞こえた。


 「あなたは、415番。悲惨な人生だったわね。」


 大人びた声にその声に合った風貌。腰まで伸びた薄紫色の髪。身長や顔からはどこか幼さが残っている可憐な少女。まるで女神のような。


 「悲惨な人生...。」


 そんな少女から言われた言葉に、俺は思い返すと、確かにいろいろあった。それも悲惨と呼ばれるようなことが。


 まず小学生の頃、俺はいじめられていた。内容こそよくある胸くそ悪い内容だったり、痛ましい様な程では無いが1年から6年の卒業まで、6年間ずっといじめられていた。


 授業中、クラスカーストの上位にいるやつが挙手したかと思うと当てられた瞬間人差し指を俺の方に向け俺に発表をなすりつけられ、そしてそいつの取り巻きやクラスの連中はそれを見て俺を嘲笑う。しかも一回だけではない。5年生までずっと続いた。他にも掃除後、皆の掃除道具の片付けを押し付けられたり、俺が触れた物と俺を避けたりなどそういった経験が6年間あった。


 中学。比較的家から近い距離にあるごく普通の中学校。だがそれ故に小学校から一緒だった人が多く、小学校と変わらずいじめを受けていた主に悪口やバカにするようなことを言われたり、面倒事や役割での仕事の押し付け。これでも比較的小学校よりかはマシになった方だった。


 高校ではその経験と影響で顔見知りがいないような、入学が難しいとこだろうが少しでも遠いとこに入学した。そのおかげでいじめられはしなかったが、今まで友達がいたこともなく、どうやってクラスのやつと接していいのか友達のつくりかたも分からず、3年間ずっと一人だった。


 そして就職して社会人になってからは、労基にギリギリ引っ掛からないような会社形態で実質ブラック企業のようなところに就職。そして気付いたら何故か冤罪で捕まっていた。そのまま判決死刑で、死刑執行されこの俺の悲惨な人生に幕が降りた。

 こうして振り返ってみると、楽しさも充実も幸せもないような人生だったな。


 「あなたには特別同じ世界ではなく、それこそ全く違う世界で人生を謳歌できるよう、転生させることができるわ。」

 「転生?違う世界?」


いくら頭が少しはよかったとは言え、理解するのに時間がかかる。


 「まあ、そこは行ってみた方が早いわ。転生するか、しないか。あなたの選択肢はそのどちらかよ。」


 急に選択を迫られた。転生しなかったらどうなるんだろう。それこそ地獄に行くことになるかもしれない。天国にも興味はあるけれど確実に行けるか分からない。それに、もう一度人生をやり直せるのなら今度こそは自分の人生を謳歌できるかもしれない。


 そのことに魅力を感じ、結論を出すのにそう時間はかからなかった。


 「分かった。転生する。その、いろいろどうなるのか不安なところもあるしそれこそその世界での人生どうなるか分からないけど。」


 不安混じりに俺は迫られた選択に答えた。決めたとは言え、不安は完全には拭いきれない。

 そしていつの間にか椅子に座っていた彼女は、「分かったわ。」と言いゆっくり立ち上がり何やら呪文のようなよく分からない言語で唱え始めた。

 するとその瞬間、俺の頭上と足元から俺の体を包み囲むようにして、魔方陣が展開された。意識が深い眠りにつくような、深く沈んでいく感覚に襲われて、だんだんと、まぶたが、重くなってきて、気づいたら、俺は、





──産まれていた。

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