第10話 初めての彼女との最後の高校生活は俺の想像通りには行きませんでした。
三月九日俺は優月といつも通り一緒に登校していた。
このいつも通りもいつも通りではなくなると考えると少し寂しい。
優月の横顔を見られなると考えていると「せめてもう少しだけ」と思い、俺は優月の横顔を見つめていた。
するとそれに気がついた優月が言ってきた。
『どうしたのそんなに見つめて』
『流石に照れると言うかなんと言うか……』
「いや、こうやって優月の隣を歩けるのも今日で最後か。って思って」
「嫌だったらごめんな」
『そんなことないよ』
『むしろ嬉しい』
「そっか」
俺が微笑むと優月も返した。
校門まで着き、友人たちと挨拶を交わしたり「寂しくなるな」と言った卒業式の日だけ起こる会話に花を咲かせ、楽しんでいた。
楽しい時間はすぐに過ぎ、卒業式本番になった。
卒業式の最中、俺の心は悲しみと高揚感に満ちていた。
今までの思い出に耽ていると卒業式は終わっていた。
教室に戻り、皆で写真撮影をした。
あちこちでは告白が行われているのだろうと思っていると俺のクラスでも行われた。
結果は成功。
当然、俺はそのクラスメイトを祝福した。
皆に別れの挨拶を済ませ、優月に「帰ろう」と誘おうとした。
しかし、教室に優月の姿は無かった。
俺は校門に行き優月を待つことにした。
すると遠くから俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
聞こえてきた方へ顔を向けるとそこには美香がいた。
美香は俺に近づいてきて言った。
『まずは先輩、卒業おめでとうございます!』
「ありがとう、美香」
『先輩に一つお願いしてもいいですか?』
「良いけど何?」
『私と付き合って下さい!』
美香は深々と頭を下げ、言った。
俺の答えは考えるまでもなく出た。
「ごめん」
「俺は優月のことが好きだ」
「だからそのお願いは叶えてあげれない」
「すまない」
俺がそう言うと美香は顔を上げて言った。
『先輩が断るのは分かっていました』
『ですが、これで私の中で後悔は生まれなくなりました』
美香の頬を水滴が伝った。
『ごめんなさい、私が泣いちゃったら先輩どうしたら良いか分からないですよね』
『本当にごめんなさい』
『笑顔で先輩のこと見送るつもりだったのにな……』
『私、格好悪いですね』
美香は泣きながら笑顔でそう言った。
俺は「自分の判断が正しかった、自分の本心を伝えたから良いと分かっている」のにも関わらず目の前の後輩を救えない自分のことが憎くて仕方がなかった。
「自分は今、何をすべきなのか」そう考えた。
その結果、俺は「ごめん」と言うことしか出来なかった。
『謝らないで下さい』
『まるで先輩の本心が悪いことみたいじゃないですか』
『謝るなら私と約束して下さい』
『優月先輩を世界で一番大切にしてあげてください』
「嗚呼」
『約束ですよ』
美香はそう笑顔で言った。
すると美香は笑顔のまま卒業式の片付けへと向かった。
その笑顔を見た瞬間に俺は美香との約束を守るために優月を探しに行った。
俺は学校の敷地内を隈無く探した。
すると普段は人のいない校舎の陰に優月の姿があった。
しかし男子と何か話をしていた。
俺は物陰に隠れ話を聞いた。
話の内容は男子から優月への告白だった。
俺は何故か少し悲しくなった。
優月が答えを言った訳でもないのに。
優月は口を開いて言った。
『ごめんなさい』
『今、私にはとっても大事な人がいるの』
『だからその告白は受け入れられない』
俺は心の底から嬉しくなった。
男子生徒は「なら仕方がないですね」「その人のこと、もっと大事にしてあげてくだいさいね」「男子って言うのは以外と繊細なんで」と言い、去っていった。
俺は嬉しさを沈め、「彼の想いもあるから」と思いより優月のことを大事にしようと決意した。
俺以外にも告白の場面に立ち会わせてしまった優月の友人が居たらしく、その友人が優月の所に行き、楽しそうに訊いた。
『さっき行ってた大事な人って例の幼馴染みでしょ?』
優月も楽しそうに答えた。
『なんだ居たのか。うん、そうだよ』
友人が更に訊いた。
『具体的にどんな所が好きなの?』
『そうだな~』
『私が抱き付いたりすると顔を赤らめて可愛かったり、私のこと凄い褒めてくれたり、好きって言ってくれたりして格好良い一面もある所とか他にもいっぱいあるよ』
それ聞いている現在、俺の顔はきっと真っ赤になっているだろう。
『他には?』
『他には~』
その後も優月が俺の好きな所を言ってくれ俺は恥ずかし過ぎて倒れそうになった。
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