第9話 可愛い彼女と後輩が俺を取り合い俺の体力はもたないが可愛いので許すことにしました。

 『先輩遅いですよ』


 「ごめんごめん」


 『ってか何で会うなり早々私は二人がイチャついてる所を見なくちゃなんですか』


 「いや~これは……」


 『この学校の生徒は皆、私たちが恋人だって知ってるみたいだから隠す必要ないかなって』


 『だからってもう少し自重出来ないんですか?』


 『それとこれは優月先輩だけが悪い話ではありませんからね!』


 『先輩もそんなにデレデレしないで引き剥がすとか出来ないんですか?』


 『優月先輩のことを可愛いと思うのは私も分かりますが周りの目という物を気にしてください』


 『見ているこっちが恥ずかしくなりますよ』


 その後も美香の俺たちに対する説教は続いた。


 俺は何とかしてこの説教を止めなければと思い言った。


 「俺たちに対する説教はありがたいが時間が無くなってきて委員会の仕事が出来なくなりそうなんだが……」


 『あっ!忘れていました。ごめんなさい』


 「俺の最後の委員会の仕事なんだ。ちゃんと終わらせたい」


 優月がいたことで人手が多くなり想定よりも早く終わった。




 教室に戻ろうと歩き始めると優月だけでなく美香までもが俺の腕に抱き付いてきた。


 俺は美香に抱き付いてきた理由を訊こうとしたが先に優月が口を開いた。


 しかも威圧的に。 


 『美香ちゃんあの、少しいいかな』


 『はい、どうしましたか?』


 『今、誰に抱き付いているのか分かってる?』


 『はい、分かってますよ』


 『私が今、しがみついているのは先輩の腕です』


 『その先輩、私の彼氏なんだけど?』


 『いや~「皆が先輩たちが恋人同士だって知っているから」と言う理由で優月先輩が抱き付くことを良しとするのなら、私が先輩のこと好きなのも皆知っているから良いかなと思いまして』


 『私たちは恋人って言う関係があるからいいの!』


 『片想いしている相手にだって抱き付いたって別に良いじゃないですか!』

 

 『先輩だって嫌がってないですよね?』


 『嫌がってるよね?』


 『嫌がってないですよね?』


 これを二人の美女に挟まれながら言われ、それを多くの人が見ている。


 あまりにも恥ずかしすぎる。


 『『ねぇどっち!』なんですか!』


 俺は「嫌だ」と言わなければならないのは分かっている。


 だが!だからと言って美香のことを傷つけられない……。


 俺はどうすれば……。




 俺はひたすらに考え、一つの答えに行き着いた。


 「それ以前に恥ずかしいから二人とも離れてくれると助かるんだけど……どうかな?」


 二人は素直に俺の腕から離れてくれた。


 「助かった」そう思うことしか出来なかった。


 そのまま美香は自分の教室に行き、俺と優月は残った休み時間に昼食を使った。


 


 全ての授業が終わり、優月と帰っていると優月は俺に訊いてきた。


 『私と美香ちゃんに抱き付かれた時、嫌じゃなかったの?』


 「恥ずかし過ぎてそんなこと考えている暇なかったよ」


 『じゃあ想像してみて』


 「どうだろう……可愛い人に左右から抱き付かれて嫌ではないと思うよ」


 『へぇ…そうなんだ』


 『美香ちゃんのこと可愛いと思ってるんだ』


 「けど!恋愛感情を抱いているのは優月だから!」


 『なら良いけど……』


 俺は何とかこの危機的状況を乗り切れ安心した。


 その後、優月を家まで送り届け家に帰ると疲労が一気に俺に襲いかかってきた。


 卒業式の前日ってこんなに疲れるものなのか……。


 でも、可愛かったからいいか。


 

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