第5話 可愛い彼女は嫉妬していても可愛かったです。
「今、君は俺に告白してのか?」
『そうですよ』
『私は目の前の先輩に向けて告白したんですよ』
「そっか……」
『先輩そんな複雑な表情してどうしてんですか?』
「俺、実は彼女がいるから君の告白には良い返事が出来ない」
『本当に言っているんですか?』
「嗚呼」
『わかりました』
『彼女さんが既にいるなら仕方がないです。ですが私、ここで諦める程聞き分けの良い女じゃないですからね!』
『絶対に今の彼女さんよりも私の方が良い女だって思わせてあげますから!』
『それじゃ私、次の授業理科室なので』
そう言うと悲しさを含んだ笑みを俺に見せて走って行った。
俺は申し訳ない気持ちとこれで良いという自分を肯定する気持ち、そして優月の怒っている理由の謎。
この三つが頭の中を駆け巡り、その後の授業は集中出来なかった。
全ての授業が終わり優月と帰っているが一言も言葉は交わさず、気まずい空気が漂っていた。
そんな中俺は訊いた。
「ずっと何で怒っているのか気になるんだけど…」
優月は何も言わなかった。
「あの…俺自身も改善したいからさ…言って欲しいんだけど…」
優月が何か話したが小さくて聞き取れなかった。
「ごめん、今なんて?」
『だから!可愛い後輩と仲良くしてたのが羨ましかったの!』
『委員会の仕事があるって言うから仕方がなく一人でご飯食べて、暇潰してたのに可愛い後輩と一緒にいてそれに、私といる時より笑ってたから……』
『君の隣は私だけの物なのにって思って……』
「つまりはただ嫉妬していただけと?」
『そうだよ…自分だけの特権を誰か盗られて嫉妬して何が悪いの!』
照れながらそんなことを言う優月に俺は思わず笑ってしまった。
『何がそんなに可笑しいの!』
俺は笑いながら言った。
「いや、ごめん。まず何も悪くないよ」
「むしろ可愛いなって思ったよ」
優月は照れながら下を向いた。
俺は続けて言った。
「それと安心してほしい」
「あの時一緒にいた後輩「美香」って言うんだけど、優月が俺から目を逸らした後、美香に告白された」
『それで何て言ったの…?』
「もちろん断ったよ」
『本当に…?』
「嗚呼、言っただろ?こんなに可愛い彼女がいてくれるのに他に目移りする訳ないって」
優月は満面の笑みを見せ俺に抱き付いてきた。
俺は自分のした行動が正しかったのだと確信した。
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