第2話 冬の人
ある女の子はこの世界が嫌いだった。
自分が頑張らなければ幸せを手に入れられないこの世界が嫌いだった。
女の子には1人だけ友達がいた。
その子は毎日楽しそうだった、幸せそうにも見えた。
友達はいつも笑っていた。
雪が降る季節はこの世界が一層凍りつくようで嫌いだった。
女の子の周りは寒かった。
友達の周りは暖かそうだった。
女の子はその友達のようになりたかった。
女の子は友達に尋ねた。
毎日なんで楽しいの?と
友達はこう答えた。
幸せが沢山あるからだよ。と
幸せはどうやら暖かいらしい。
女の子は幸せが欲しかった。
女の子は幸せを集めた。
でも、思うように幸せは集まらなかった。
友達は増えないし、お金もなかった。
テストの点数は50点だし、妹の方が可愛がられた。
女の子は注目されたかったけど誰も見てくれなかった。
女の子には幸せがなかった。
女の子は寒かった。
昨日の雨で寒さが一層増していた。
胸の辺りが冷たくなった気がした。
マフラーに顔をうずめた。
いつのまにか隣に友達が立っていた。
友達は言った
昨日は雨だったけど今日は晴れだから幸せだと。
友達は言った
この前よりもテストの点数が少し高かったから幸せだと。
友達は言った
私は女の子だけが友達でいてくれれば幸せだと。
友達は言った
女の子が今日体育で走るのが1番速かったことはすごいと。
女の子は驚いた
女の子を見てくれていた子がいたことに
女の子は嬉しかった
自分が必要とされていることに
女の子は気がついた
今日が晴れで嬉しいと思っていることに
女の子は幸せを持っていた。
知らないうちに近くにあった。
女の子は思った。女の子が今日まで生きてきたその頑張りのご褒美が、今日の幸せなんだと。
女の子は幸せを感じれるようになった。
女の子は友達のようになれた。
女の子の幸せは目の前にあった。
幸せは確かに暖かかった。
女の子の幸せは友達がいてくれたことだった。
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