幸と女の子

赤いりんご

第1話 小さい人

 女の子は1人で遊ぶのが好きだった。

お友達と遊んでいても1人になりたいと思うことが多かった。


 その日は女の子よりいくつか年上のお姉ちゃんと妹とお母さんも一緒に遊びに出かけていた。 

途中までは一緒に遊んでいたけれど、途中から面白くなくなってきていた。

ぐるりと周りを見渡すと木が生えて林のようになっているところがあった。

皆んながいる所よりも離れていたけれど、女の子は走って向かった。

林には落ち葉がいっぱい落ちていて地面を覆っていた。

女の子は落ち葉の上に足を踏み出した。

女の子は走ってきた方向を振り向いた。

さっきまで遊んでいた場所は見えなかった。

お母さんは心配しているだろうか、

いなくなった女の子に気がついているだろうか、

女の子は少し心配になった。

戻ろうかと思ったが女の子は戻らなかった。


女の子は地面を見つめた。

枯れた落ち葉の中にまだ紅い色を残した葉があった。

周りを見ると所々に同じような葉があった。

女の子はその葉を拾い集めた。

一ヶ所に集まった紅い葉は綺麗だった。


女の子はもう一度後ろを振り向いた。

やはりお母さんのいる場所は見えなかった。

でも女の子は信じた。

お母さんからは女の子のことが見えていると。


女の子はその場にしゃがみ込みその葉を山のようにした。

だが思ったような高さにはならなかった。

女の子はまた心配になった。

しゃがみ込んだせいでお母さんから見えなくなってしまったらどうしようと。

立ちあがろうかと思ったが女の子は立ち上がらなかった。

女の子は信じたきっとお母さんは女の子が見えなくても忘れはしないと。


女の子は紅い葉を増やした。

さっきよりも高くなった。

日が暮れてきていた。

女の子はどうしても見つけて欲しかった。

お母さんに迎えに来てほしかった。

紅い葉が少しずつ暗くなっていった。



後ろから女の子を呼ぶ声が聞こえた。

振り向くとお母さんが歩いてきていた。

帰るよと女の子に手を伸ばした。

女の子はもう一度紅い葉を見つめた。

さっきよりも明るくなったように感じた。

女の子は手を取りお母さんと落ち葉の上を歩いた。


女の子にはそれが幸せだった。





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