鴉 148

「じゃ、あとは若いふたりに任せるね〜っ。よろぴくぴく〜っ」

「ちょっ………天ちゃん、言い方‼︎」






 何のことかって、昼ご飯と食後のお茶、コーヒー、カフェオレの後片づけのことで、天狗はぐふふふふってまた変な笑い方をして、スキップで台所を出てった。






「………」

「………」






 天狗は何を思うのか。



 光は何を思うのか。






 別に俺は、光にどうこうしようとか、光をどうこうしようとか、思ってるつもりはないのに。






 だから変に気を使われても。



 変に意識させられても。



 変に気まずいだけで。正直。






 ………困る。






 カラスがテーブルの上に乗ってて、見張るみたいにこっちを見てる。



 これでもし俺が光に何かしようものなら、くちばしで刺されるんじゃないか?ってぐらい見られてる。






 いや、だから、何もしないし。






 俺はいつも通りでいい。



 光が居るだけでいい。






「よし、洗うぞ」

「へ⁉︎」

「ん?」

「え?あ?う、ううん。何でもないっ。じゃああのっ、僕洗うから、鴉は拭いて下さいっ」

「………」






 何て言うか。






 完全に天狗のせいだけど、とにかく光が俺を意識しまくりで、さっきから変な空気すぎる。






 洗うって言って袖をめくりながら流しに行く光の動きは、ガッシャンガッシャン聞こえてきそうにぎこちない。






 ………かわいいというか、何というか。






 特に何も言わず目で追っただけなのに、光がくるんってこっちを向いた。



 そして。






「今笑ったでしょ⁉︎」






 って。






 笑ったな。



 確かに。






 自分で言うのも何だけど、俺は表情が乏しい。



 天狗に比べるとほぼ無表情。表情筋が死んでるレベルって、天狗に爆笑されたこともある。






「また笑ってる‼︎」






 ………はず、なんだけどな。






 思わず肘のあたりで、口元を覆った。






「隠しても分かるよ?」






 じろって俺を睨むみたいに見て、心なしか口を尖らせる。






 光と居ると、光と居たいって思う。



 光と居ると、それだけでいいって。






「ほら、洗え」






 俺は小さい光の横に立って、何で笑ったの⁉︎って騒いでるその小さい頭に手を乗せた。

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