光 142

えっと。






状況が、よく飲み込めない。



これは一体。






寝てた。



天ちゃんと共謀して、鴉を真ん中にして。



最初寝れなかったんだけど、寝ちゃったら結果結構がっつり。






光って鴉に呼ばれて起きた。



呼ばれなかったらまだ多分寝てた。






え、今何時?ってぼーっとしながら起き上がったら、今度は天ちゃんにぴかるんこっちおいで〜って呼ばれて、ん〜?ってぼーっとしたまま台所に行った。






台所。



テーブル。






いつも席は、天ちゃん、天ちゃんの前に鴉、その横に僕が並んで座る。



なのに、呼ばれて行った台所。



座れって鴉に言われたダイニングテーブルは、何故か僕がひとり。天ちゃんと鴉が並んでる。






僕が座ったら、ついてきたいっちゃん、かーくん、きーちゃんが床や椅子の背もたれにそれぞれおさまった。






え、何かすんごいこわいんだけど。



何が始まる?






状況が飲み込めない。僕何かした?






テーブルの上には、僕が使わせてもらってるマグカップ。しかもいれたてなんだと思う。



湯気がゆらゆらしてるカフェオレがあった。






「まあぴかるん、飲んで飲んで」






天ちゃんにすすめられて、とりあえず息で冷ました。






え、何だろう。



何だろうって、大事な話だと思うけど。でも何だろう。






昨日のこと?



それともこれからのこと?






これから。






これから、か。






聞かれたら困る。



これから、僕はどうしたらいいんだろう。






最後の矢が抜けるまではここに居る。



抜けたら山をおりて、それから。






そのそれから、の先は、考えてない。考えてないっていうか、未成年の僕に選択権はないって思ってる。実施ないし。






父さんによるよね。全部。



父さんが僕をどうするつもりなのか。



山をおりてすぐに警察に行こうってことは決めてる。



行けば保護してくれる。ニュースで僕のことをやってるんなら。



そしたら父さんに連絡が行く。






それからは、それから。僕ができるのはそこまでで、それからは与えられた場所で僕は何とか生きていかないといけない。選択権のないところで。



もし、山を、おりるなら。






でも。






もし僕が人間のルールを無視して、鬼のゆっきーとゆうちんの特権であるあの赤い桜に、もし時間を戻してってお願いしたら。そのこれからを選ぶとしたら。選んだら。






それ以上考えると泣きそうで僕はふーふーしたカフェオレを飲んだ。



カフェオレは甘くておいしくて、鴉が作った味がした。

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